さりげなくニュース2009.9.13


    今回の衆議院選挙で民主党は大勝した。戦後64年間日本の責任ある政党として日本そのものであった自民党は敗北を帰した。冷戦体制が終焉して世界の勢力地図が塗り変わり、軍事、外交初め国内のシステムも時代にあったように変革してあるべきであったが、絶対的力のあった保守政権は小手先の小泉改革と言う延命政権で、かろうじて時を稼いできた。
 
  とにかく「政権交代」という誰にでも解り易いキャッチフレーズに国民は飛びついた。一方の保守党の「責任ある」というキャッチフレーズは観念的であった。小泉の「民営化に賛成か、反対か」という誰にでも解るフレーズから保守党は何も学んでいなかったようだ。これは歴史上でもナチスの「ゲルマン民族は優秀」の一言に次の政策はすべて見えてくるようにキャッチフレーズの大切さがある。
 
  敗北後の麻生首相のフテクされた記者会見は国民に強烈な印象を投げかけた。民主党の手腕は全然未知数と言っても過言ではないときに、自民党はもう崩壊したがごとき態度は非常にもったいなく映る。だいぶ横道にそれてしまった。
 
  次期総裁である鳩山氏の論文が米国で反響をよんだ。
 「今回の世界経済危機は、冷戦終結後アメリカが押し進めてきた市場原理主義、金融資本主義の破綻によってもたらされたものである」(私の政治哲学)。それに続けて諸国の伝統を無視してアメリカ主導のグローバルスタンダードにあわせて諸国の構造を改革せよ、という思潮だったと鳩山氏は続ける。事の本質をついている。小泉-竹中構造改革の本質はここにあったわけであるが、当時国民は見抜けなかった。
 
  小泉-竹中がアメリカの無自覚な追随者であったのに比べ鳩山氏はアメリカに物言うぞといったシグナルをアメリカが受けたとしても不思議ではない。
 
  ニューヨーク資本家を中心に中国との経済交流に世界経済の位置づけを据えるとき、中国を仮想敵国とするアメリカの政治思考は弱まりアジアにおける覇権を中国に譲り渡そうとのアメリカの意図が見え隠れする。そのような視点にたってみるとき、日米安全保障問題への取り組みも従来とは違ったものになりえる
 
  アフガン問題にあって、アメリカの勝利はおぼつかない状況である。タリバンをアフガン政権内に取り込もうといった軟化が始まっている。我が国がアメリカの属国から脱皮するということは、先の鳩山氏のように事の本質を自らの思考で咀嚼することが必要になってくる。全身全霊アメリカべったりに慣れ親しんできた外務省や利害勢力との真摯な切磋琢磨が必要なことかもしれない。
 
  英米グローバルスタンダードが引き起こした世界経済危機で被害の大きかった国は当の英米ではなく日本とドイツである。IMFの予想では2009年のGDPは日本のマイナス6%である。アメリカはマイナス2.6%。
 
  スポーツの世界でも経済の世界でもスタンダードを決めえる国は強いことが立証された。属国はどこまでも属国でしかすぎず世界への発言力はないと理解しなければならない。
 
  鳩山政権の舵取りは予断を許さない。公的総債務残高がGDP比215%の我が国。もちろん世界最悪である。IMFの研究によると公的債務がGDP比60%を超えると財政刺激策が効果をなくする。 
 
  財務省はこれまでずっとケインズ主義的公共事業の資金拠出を国内貯蓄と債権市場に頼ってきたが、政策立案者は債権市場もそろそろ限界かと懸念しだした。
(Telegraph 01 Sep 2009)