さりげなくニュース2009.8.30(NO.97)


   イランはついに核爆弾に換算すると一発分の低濃縮ウランを製造した。IAEA(国際原子力機関)は6月5日レポートを発表した。
 
  すでに製造した量は1.3トンに上ると見られている。核兵器の実用化に向けて着々と事は進んでいる。
 
  先頃の疑惑の多かった大統領選挙をものにしたアハマド・ネジャド大統領は西側に対してきっぱりとウラン濃縮を止めるつもりのないことを宣言していたのが印象に残った。
 
  核弾頭をくっつけて兵器として運搬する長距離弾道ミサイルに転用可能な技術は人工衛星であるが、これには今年の2月3日、打ち上げに成功している
 
  年初にイランの核開発に必要な原料であるイエローケーキ(ウラン精鉱)は底をつくはずだとの見方が浮上して、生産国にたいしてイランへの輸出をしないようにとの要請がなされた。だがコンゴなどの国のように国際的監視が行き届かないところもあった。
 
  核の問題でアメリカが一番恐れた核の拡散が現実の問題となっている。この期に及んで、アメリカはイランと戦争を構える気はあるのか。あるいは、イスラエルのイランへの攻撃を黙認するのか。早晩オバマ氏には決断が迫られることになる。
 
  イランと事を構えるということは、イランの原油生産の停止、それにともなう原油価格の高騰、ホルムズ海峡の封鎖と相まって、欧米経済への甚大な影響を覚悟しなければならない。それらのリスクを補って余りあるのは、イランの核兵器製造プログラムの遅延を2〜3年などではなく、5〜10年の遅延であると、イスラエルの国家安全機関の研究員は見ている。
 
  国内問題で現在、オバマ氏の支持率ががた落ちしている。皆保険制度に向けての保険改革に全身全霊を傾けているオバマ氏にもう一つの戦争に従事する余裕が残されてあるのか。とりあえずCIAのパネッタ長官はイスラエルを訪問してオバマ氏の方針を説明している。とにかく対話を通じて核武装の放棄を促すというものだ。アメリカの意向を無視しての攻撃を控えることにイスラエルは同意したと報じられている。
 
  クリントン国務長官の発言からオバマ政権の真意を汲み取ることができる。「イランが核保有国になろうものなら片輪にするほどのアクションを起こす」というタイトルの記事の中で、クリントンは、イランの核に対しては、湾岸諸国を守るために米国の核の傘で対応すると述べている。(Guardian,Wed.22 Jul)軍事攻撃という言葉は見当たらない。この発言は、イスラエルのダン・メリドール情報原子力担当大臣を失望させるのに十分であった。もはやイランの核保有は既成事実であるかのようなクリントンの捉え方を批判している。
 
  クリントンの発言の真意は、イランの核保有によって湾岸地域にも核開発の選択肢が持ち上がることへの懸念であると想像出来る。
 
  一方のイランの国内事情も大変に混迷しだした。閣僚人事問題で最高指導者ハメネイ氏と大統領の間に亀裂が生じてきている。反体制派からは揺さぶりをかけられ神権体制そのものが揺らぎだしてきている。宗教的最高権力者よりもアハマド・ネジャド大統領が強くなり神権政治に終止符が打たれるのか、それともハメネイ氏を支える保守派がアハマド・ネジャド氏を追い出すのか。そんな不安定な内政状況にある。想い起こせば、13世紀なかばにモンゴル帝国からイスラム世界は侵攻されバグダッドは廃墟となり今度、2003年には米軍により再度の侵攻を受けることになる。歴史上のバトルなのかもしれない。