さりげなくニュース2009.7.26(NO.95)
米国からカート・キャンベル国務次官補が来日している。議題は日米安保締結50周年に合わせた日米安保共同宣言づくりと言われている。現在どちらかと言えば日本が恋恋しているアメリカの「核の傘」をして、しっかり機能させうるというアメリカ側の姿勢を打ち出すことに主眼がありそうだ。
先頃、元外務次官の村田良平氏による証言があった。核持込を黙認する密約があったというものだ。今この時期にどうしてこのような証言が、元外務省の最高幹部の口から出たのだろうかという疑問が湧く。国内における核への反応をみるためのアドバルーンなのか。
次期政権を担うであろう民主党の鳩山代表のコメントがあった。14日の記者会見での発言は非核三原則を否定しないが、核持込の密約は必要性があったから現実的な対応がなされた。というものであった。
アメリカは現在、核というものをどう捉えているのか。
世界から核を全廃すると訴えた4月5日のオバマ氏によるプラハ演説にすべてが凝縮されてある。ところが、この理想主義演説をなす五時間前に北朝鮮によるミサイル発射が行われた。この日オバマ氏をあざけ笑うかのように3,000キロもミサイルを飛ばしたのだ。2006年の核実験以来の暴挙となった。
現在米ロ間で、核弾頭の数を2,000発前後まで削減する交渉が行われている最中である。10年前の核弾頭数は米ロ各10,000発から15,000発あったものが毎年、数を減らしてきており2007年には両国とも約5,000発になっている。ゆくゆくは1,000発まで減らす計画と見られている。
核の問題でアメリカが最も恐れることは、核の拡散という問題である。特に北朝鮮がミサイルを発射した時は、日本における核保有への盛り上がりを真剣に危惧したと言われている。
アメリカの核の縮小の方向性が打ち出された時、核の傘が有効に機能しえるのかという疑問が日本はじめアジアの同盟国に持ち上がるのは必須であった。軍事大国化をめざす中国は145発の核弾頭を有する国として、歴然と隣国にある。
世界で唯一の被爆国といえども、現実主義に立ち至るとき平静ではありえないのも、確かなことだ。
オバマのプラハ演説を理想主義として片付けようとするものがある反面、非常に現実的だという見方もある。
核兵器が存在する限りは、敵を抑止するために効果的核戦力を維持する。同盟国に対しては防衛を保障する。[asahi.com 2009年4月5日]とオバマは演説する。
オサマ・ビン・ラディンはパキスタンの核を手に入れてアメリカ本土に攻撃を企てる計画をしている。アメリカにとっては9.11に比較にならない脅威である。北朝鮮の核もこの関連で見る必要がある。
こんな危険な核が全廃されることがアメリカの国益にかなっていると考える有力者が増えている。
通常兵器ではアメリカの独壇場である。絶対有利である。現在の核の存在意義は、弱小国が対等に超大国と交渉するのに有利な材料となっている。
アメリカにおける核廃絶を目指す超党派の有力者は、レーガン政権の国務長官シュルツ、クリントン政権の国防長官ペリー、ニクソン政権での安全保障担当補佐官キッシンジャー、ナン上院軍事委員会委員長である。核兵器からの世界の自由というタイトルの記事で、テロリストに渡った核は、抑止力としての核の概念を変質させる。[WSJ January 4, 2007]