さりげなくニュース2009.6.28(NO.93)


  今、中東の大国であるイランでデモが吹き荒れた。現大統領のアフマディネジャド氏が60%以上の得票をして大統領選に勝利したが、それは不正な手段での結果なので、選挙のやり直しをせよと対立候補がデモに打って出た。その事件が大きな波紋を呼んだ。
 
  ワールドカップ予選で「アジアのマラドーナ」との呼び声が高いカリミ選手らが緑のリストバンドを付けていたのが目に留まった。この緑こそイランの国のシンボル色でもあり、また有力対立候補である元首相のムサヴィ氏支持の色でもあった。
 
  イスラエルなどこの世からなくしてしまえと過激な発言をするアフマディネジャド氏に対して、対米外交をはじめとして欧米ともっとうまくやっていこうとする改革派のムサヴィ氏。この改革派をイランで最大の人気スポーツの選手たちが応援したのだ。ムサヴィ氏側に与えた影響は軽微なものではなかったと見られる。
 
  ムサビ氏側が独自に調査した出口調査では大差で勝利できる数字であったと主張した。それにアフマディネジャド氏側、すなわち前政権側に不正があったであろう兆候が数々指摘されだした。
 
  しかしイランの最高指導者であるハメネイ師は、アフマディネジャド氏勝利の選挙結果を認める発言をした。デモが拡大して流血と混乱に対してはムサヴィ氏が責任を取れと、最後通告を発したのだ。ハメネイ師にこれまで従順につき従ってきたハタミ元大統領やラフサンジャニ元大統領のハメネイ師ヘの叛旗 もデモの流れ次第では、尻蕾になるのか。
 
  故ホメイニより二階級引き上げられて最高指導者に抜擢されたハメイネ師は、アフマディネジャド氏を守ることによって自らの地位も安泰なものとなる構図が見えてきた。中国天安門事件における動乱とは同じ改革でも、かなり違いがある。
 
  アメリカはつい最近、ソ連の衛星国であったウクライナやグルジアにオレンジ革命、バラ革命をし掛け干渉した。今回のイランに対してはどうであったのだろうか。二つの記事に注目する必要がある。
 
  [FT.com Jun 18 2009](今、静観が最良の政策)のなかでアメリカの態度を知ることが出来る。
 
  クリントン国務長官やバイデン副大統領は今回のイラン騒動に対して強い姿勢で臨むことを進言しているが、当のオバマ大統領はイランの政策に干渉することを望まないことを強調していた。ムサヴィ氏よりアフマディネジャド氏の方がアメリカにとって扱いやすいと見ている節がある。そのことは[エルサレム前田英司 毎日新聞]によると、対外特務機関モサドのダガン長官の16日国会の外交防衛委員会での発言が注目に値する。
 
  イランではどっちの人物が大統領になっても核開発は進むとイスラエルは捉えている。ただムサヴィ氏が勝利することによって米イラン対話が進行して、アフマディネジャド氏よりはイランに対して、速やかな制裁強化を進めにくくなる。また、今回のイラン騒動はこれ以上の拡大はないとモサドの長官が言っている。
 
  ムサヴィ氏をなんとしても勝たせたい必然性が、アメリカにもイスラエルにもないから、両国による政治干渉はなさそうである。 これら一部のことから類推してみる。オバマの一見イスラムに見せる好意的同調の陰には強引な決断が隠されているような兆しが見え隠れする。
 
  核兵器のないイランへの敵愾心はすでに核兵器を持つ北朝鮮の比ではない。かつて、日本の過激派セクトの分裂、内ゲバのごとく、キリスト教とイスラム教の対立には似たような精神構造を見出せる。