さりげなくニュース2009.6.14(NO.92)
ヨーロッパも我が国も選挙の季節を迎えた。ヨーロッパではEU加盟国での欧州議会選挙が4日イギリス、オランダを皮切りに始まった。
ヨーロッパは今、各国とも、未曾有の失業率に苦しんでいる。ユーロ経済圏の失業率は9.2%までに急上昇している。割合に優等生的なドイツでもここ一年間で7.4%から7.7%に上昇している。我が国の失業率5%前後とくらべて、高い数字である。
ドイツは、人員削減に入ったばかりである。そのことは、まもなく失業率は二桁に突入するであろうと見られている。他のEU圏に目を転じてみる。このところ三倍に跳ね上がったラトビアは17%、エストニアの14%である。尋常な数字ではない。
こんな雰囲気を反映してなのか、今回の欧州議会選挙でオランダの極右政党である自由党は反イスラムと反移民を掲げて議席を10議席近くまで伸ばしそうな勢いである。いつか来たナチス党の臭いがしないでもない。
それもそのはず、経済が低迷するとそのしわ寄せは弱者と若者に降りかかる。25歳以下の失業率はとても高い数字となっている。スペインの36%は断トツに高い別格の失業率と思われてきたが他の国も似たような数字になってきている。フランス、イタリアの22%。スウェーデン26%といったところだ。
社会の不穏な動きは若年層の失業率と無関係であるとは言い切れない。そのような指摘もある。
民主主義の根幹である選挙で、歴史的に、人々が極右を選択するとき、それを拒む方法はなかった。それとの関連で今回の小沢前民主党代表と西松建設に関する報道の問題が示唆に富む。
5月28日付け東京伝、ニューヨークタイムスは、我が国の、西松建設事件に絡む、報道のあり方に対して鋭い点を突いていた。
権力側と報道機関のもたれ合いで、居心地の良い記者クラブという制度が、報道機関の独自の調査を怠けさせ、上からリークされたものをありがたく頂戴して、一般大衆に差し出す。一般大衆側は大手のニュースメディアを批判的に検証などはしない。その暇のある人は限られている。
今回の西松事件では、かつては、批判精神が非常に旺盛であったが、最近見る影もなくなった、ある大手マスコミの、検察からのリーク記事に端を発したものであった。一方、そのことに関して、弱小新聞である東京新聞は東京地検特捜部がリークする前に政権党の議員も同じように西松から政治献金をもらっていたことを発表して3週間、東京地検特捜部との会話から締め出しを食らった経緯をニューヨークタイムスは指摘している。
上智大学でジャーナリズムを教えている田島泰彦氏の談話は「ニュースメディアは権威にたいして番犬であるべきなのに、尻尾振り犬のように振舞っている」というものだ。京都大学で国際政治を教える保守的傾向の強い中西氏の目にも今回のニュースメディアの報道の仕方は異常にみえるようだ。「何が問題になっているのかを国民に知らせることにニュースメディアはしくじっている」と。また「政府を変えることに、また政治的麻痺状態を打ち破る機会を失った。国民はそのことを知りさえしない」と中西氏は談話を結んでいる。
外国という第三者の視線に映る我が国の政治や、民主主義の根源である報道のあり方は、鬱屈したものに違いない。
オバマ米国大統領を訪問した我が国の首相の遇され方に、我が国の置かれている政治状況はすべてを物語っているのかもしれない。