さりげなくニュース2009.4.12(NO.88)
G20が開催される数日前、麻生首相はドイツ首相アンゲラ・メルケルの批判とも取れる内容をフィナンシャル・タイムスに述べた。
1990年代初頭、我が国のバブルが弾けどん底からの経済回復を経験した自信がなせる発言なのかもしれない。
世界的景気後退局面での財政出動を懸念するメルケルは、財政対策の必要不可欠さを理解していない[FT:March31 2009]
麻生首相は過剰な公共支出のリスクを懸念するメルケルを一蹴した。ドイツにしてみれば政府債務がGDPの170%にも達しようとしている国の首相からは言われたくないと思っているかもしれない。ドイツという国はリヤカーにマルク紙幣を一杯にしてパン数個を買い求めたという経験をした国である。借金を恐れるのは人一倍であることは想像できる。
今回のG20にIMF創設や固定相場制
を決めたブレトンウッズ体制に匹敵する期待をかけた向きもあったが、終わってみれば何も決め得なかった。がっかりというところであった。
世界的大不況から大恐慌への転換へと向かうことをなんとしても防がなければならない。しかし、アメリカと欧州の見つめるところは余りにも違い過ぎていた。
問題点を整理すれば、アメリカの問題は、銀行システムの修復に帰着することであり、ヨーロッパの問題は東欧の支援問題に帰着することであった。
自分の責任で招いたふがいない東欧のバカ兄弟の尻拭いにドイツの税金を湯水のように使うリスクには到底耐え切れないということである。それぞれ国内事情というものをかかえている。麻生首相から、おまえの国は財政の効用を理解していないと言われてもなんとも返答のしようもない。
東欧がデフォルトすればヨーロッパ経済はただではすまなくなるのは重々理解しているだろうが、ドイツはかたくなに救済を拒否し続けている。こうなるとIMFの出番が期待されることになる。
G20の前、不景気風によるデモや銀行幹部への襲撃、フランスでは企業幹部が労働組合により監禁。ロンドンでは「人間を第一に」というスローガンのもと労組など3万5千人が街頭デモ。ローマでは赤ペンキや発炎筒が銀行や保険会社に投げ込まれた。ベルリンではデモ参加者と警官隊が衝突。アメリカAIG賞与問題では従業員への殺人予告がなされたために、ロンドンの金融街では襲撃をさけるために普段着での出勤が指示された。[ロンドン=木村(産経)2009.3.30]
麻生首相はフィナンシャル・タイムスとのインタビューで大風呂敷を広げてみせた。
今後3年間でODAに新たに500億円差し出します。2012年までにアフリカに対する支援を倍増することを約束しますと発言している。小金持ちの若旦那の気風の良さだ。
話しは変わるが、オバマ米大統領が上院時代から力をいれてきた問題に富裕層の税金逃れであるタックスヘイブンがある。脱税額は、世界で年間2,550億ドルに上り、3分の1がスイスに集中すると言われている。業をにやしたアメリカは捜査当局が乗り出してスイス銀行の免許取り消しをちらつかせて顧客の情報を提供させた。スイス銀行の秘密主義に風穴が開いた瞬間であった。日本の企業で脱税であげられるのもこの問題である。
このような題材はG20のような国際間の議題には適材に見える。