さりげなくニュース2009.10.18


    大相撲の横綱朝青龍の顔は、世界大帝国を築いたチンギス・ハンの丸顔とそっくりである。彼の物腰、気迫に世界に番を張った祖先の遺伝子が脈々と受け継がれている思いがする。なぜ今モンゴルなのか。それは、現在のアメリカがモンゴル帝国にあまりにも似ている面があるからだ。
 
 双子の赤字といわれる国際収支と財政赤字は二つの帝国がともに悩まされた。その解決策として不換紙幣の発行である。金、銀の裏付けのない完全なペーパーマネーの発行である。財政赤字を補うという最大の目的がある。モンゴル帝国では80年間、問題なく通用した。その間100倍は価値が減じたであろうことは現在の米ドルにも言える。米ドルが国際基軸通貨として完全にペーパーマネーになったのは1972年からである。モンゴル帝国の基軸通貨が持ちこたえた80年のようやく半分である。
 
 ドルが持ちこたええるかどうかは、ひとえにアメリカの国力への国際的信任にかかっている。サマーズ元財務長官の英知や現財務長官のガイトナー氏といった財務官僚の賢明さだけでは、いかんともしがたい状況にさしかかってきた感がある。
 
 今月6日のインデペンデント紙のある記事で世界のマーケットに衝撃が走った。ドルは対ユーロ1.4722ドルと0.5セントも安くなった。10日現在もこの基調は変わっていない。ニューヨーク市場先物での金も1トロイ・オンス(約31g)1045ドルと史上最高値をつけた。金は今年に入ってからずっと右肩上がりの対ドルで高くなっている。
 
 インデペンデント紙の伝えるところによれば、産油国とフランス、中国は石油売買においてドルの利用停止を画策している。と言う記事であった。再度フランスという国が出てきた。イラクのフセインを炊きつけて石油の決済をドルからユーロに変えさせた張本人でもある。その後フランスはアメリカとの関係がギクシャクした。
 
 ユーロの台頭とドルの衰退というライバル関係が出現している。IMF発表2009年度第2四半期、ドル建の世界準備通貨は史上最低の62.8%に落ち込んでいる。過去10年間減少基調にある。一方ユーロの占める割合は25.9%から27.5%に上昇している。
 
 もう一つ気になる動きがある。
 
 第一次世界大戦は新興ドイツの鼻っ柱を完璧にへし折る旧勢力国の秩序保持の事件であった。第二次世界大戦においては、新興国日本も加わった複数国の挑戦でもあった。現在の状況は、ロシア、中国、ブラジル、インドといったBRICsからの挑戦でもある。アメリカはどう受けて立つのか。産油国に対しては、不十分ながらイラクへの見せしめを敢行した。ついでイランへの見せしめに動こうとしている。中国はケ小平の遺言を忠実に守っているかのように欧米の策動には絶対に過剰反応しない姿勢である。着々と軍備の拡張をすすめ地盤を固めている。
 
 金融危機によりドルが世界の基軸通貨でなくなる憶測が日増しに増幅されつつある。BRICs間ではドル依存を軽減する方法として国債の相互買い入れについて話し合いが持たれている。国連の動きとしては、先月ドルに変わる新世界通貨を提案している。
 
 話しは変わるが、オバマ氏の核廃絶の主張は裏を返せば核所有国の少数化に固定する意味が含まれている。モンゴル帝国以来の安上がりな大量報復主義としての核、その放棄までは考えてはいないと見るのが、当を得ている。