さりげなくニュース2008.928


 アメリカ政府は、イラクの統治が軌道にのりつつあるのかその兵力をアフガニスタンに向け始めている。

  イラクに開戦してから5年の歳月が流れた。開戦前2002年の記事を紐解いてみる。戦費の見通しは今にしてみれば相当に甘い見通しであった。

  91年の湾岸戦争の戦費は6週間で約600億ドルであった。一方イラクの戦費予想を当時、月に90億ドルと弾いている。

  2002年9月16日付けのウオールストリート・ジャーナルとのインタビューでリンゼー大統領補佐官は対イラク戦費を1000億から2000億ドルとの見通しを語った。ところが現在はどうであろうか、1兆ドルの戦費を使い100万人のイラク市民を殺し、米兵の4000人の命と引き換えにこの戦争は遂行されている。

  この戦争の目的は石油利権であったと元FRB(米連銀議長)の回顧録で明らかになった。

  フセイン政権当時、米系石油企業はイラクから排除されていた。イラク戦争に最後まで反対したフランスやロシアはイラクと石油開発契約を結んでいたことと無縁ではなかった。

  2002年10月18日共同通信によれば、チェイニー副大統領の談話として、フセインの石油埋蔵量世界の10%を武器に中東支配を企てることに危惧するとともに、米国の石油権益への関心をのぞかせている。

  アメリカの傀儡政権であるマリキ首相ははたしてアメリカの言いなりなのだろうか。最近、アメリカを差し置いて中国に中部アブダブ油田の採掘権をあたえた。またロシアの石油会社に対してイラク南部のウエストクルナ油田開発への入札権を与えている。アメリカの意図がどこにあるのか不可解だ。

  イラク戦争を開始した政権の中枢の前職を見るとすべて石油関連であることに気づく。チェイニー副大統領は石油採掘の世界最大手ハリバートンの最高経営責任者である。当時の大統領補佐官ライス(先頃ロシアのグルジア侵攻が相当に腸が煮えくり返ったのか、こんなことではロシアにどんな未来が待っているか、解っているのかといった恐喝まがいの発言をしていたが)は、米石油大手の役員であった。ブッシュ大統領自身、石油関連企業の経営をてがけていた。こんな経歴の政権中枢が引き起こした戦争であった。

  ソ連がアフガン戦争を引き起こしどれだけズタズタに国内は引き裂かれたかは記憶に新しい。アメリカが機軸通貨ドルを支配しているからといって無傷であるはずがなかった。我が国なども一時アングロサクソン型金融こそが最先端とばかりに規制解放の大号令のもと自由化に突き進んだ姿があった。

  こつこつと一般から預金を集めてそれを貸し付けて利ざやを稼ぐというのが本来の銀行業務である。10%強の利益である。一方陰の銀行業務と言われているものはレバレッジ型金融で融資債権を証券化して売却することでリスクを抱えずに50−100%の利益を得るものであった。そこには格付けという信用を保証する手法が介在して初めて成り立つ商法である。AAAの格付けを誰もが信用しなくなったら投資銀行は資金難に陥り倒産ということになる。この3月に救済されたベアスターンズ、救済されずに破産した投資銀行リーマン・ブラザーズ。保険の最大手AIGの危機が表面化した。市場万能主義は崩壊したかに見える。国際政治をも包含したあらたな思想の出現が待たれるところだ。