さりげなくニュース2008.5.25

　　　５月１１日、スーダン政府は隣国チャドと断交すると発表した。スーダンといえばダルフールの虐殺で注目された。その事に関して静観し続けた中国に国際的非難の目が向けられた事でも話題を集めた。
中国のオリンピックの開催でスポーツと政治の係わり合いという問題がクローズアップされた。米映画監督のスピルバーグ氏の北京芸術顧問の辞退宣言や米女優のミア・ファローさんの非難が注目を集めた。
　
　　世界の警察官を自認するブッシュ大統領がイラクにかまけてこの問題に従事出来なかった代わりを民間人が勤めているような印象をあたえた。
　
　　このダルフール虐殺、あるいは民族浄化と言い換えることもできるかもしれない問題の根幹は植民地からの独立以後の紛争に根を張っている。
　
　　ダルフール問題は１９５６年の独立以来２００万人が殺され、４００万人が家を失い、６０万人の難民を発生させたスーダン内戦の一コマであるという捉え方も出来るようだ。
　
　　ダルフール地方は地図を紐解いてみるとき、そこはスーダンの西側に位置して隣国チャドと接している。
　
　　スーダンの政権はアラブ系であるのに対してダルフールは非アラブ系の黒人である。２００３年以降の内戦ではこのアラブ系により２０万人が虐殺されたために民族浄化と欧米より非難されスピルバーグ氏のような非難行動となっている。アメリカの政府機関は「２１世紀初の大虐殺」と表現している。一方スーダン政府は「これは国内の一部民族による小競り合いである」と言って国際社会の介入を拒んでいる。
　
　　今でこそ国際的関心はチベット問題にむけられているが、中国が非難されている問題だ。中国は資源外交の結果この地において欧米特にフランスを一歩も二歩もリードすることになった。スーダンの原油確認埋蔵量は５．６３億バレルと見られている。日量で６０万バレル/ｄである。この７０％は中国に輸出されている。これまで世界銀行を初めとして欧米の融資は人権等をからめたものでありアフリカ側としてはとても窮屈なものであった。その点中国の融資は人権などといった条件を少しもつけないために歓迎される。中国はこの地において重要な利権を欧米、かつての宗主国から奪ったことになる。このようにこの地における支配構造の変更という観点から各種欧米の民間団体を含めたバッシングを見ることも出来る。
　
　　チャドのかつての宗主国フランスはだまって手をこまねいているわけではない。チャドを足がかりに北アフリカへの利権拡大に動き出している。チャドはダルフールからの難民が引けも切らない。その保護という名目でＥＵ部隊の派遣にこぎつけている。実態はフランス軍が半数を占めている。
　
　　中国から武器を買い入れ、中国の後ろ盾のスーダン。一方フランスが肩入れをしようとしているチャド。この二つの国を舞台に反政府勢力が攻撃の手を緩めていないといった構図である。
　
　　スーダン、チャド両政府は政権転覆を狙う反政府勢力を支援しているといった非難合戦をしている。
　
　　中国国内での、先頃の反フランスデモも遠く離れたアフリカとのからみで見る必要がありそうだ。