さりげなくニュース2007.12.09


  「デカップリング論」という言葉がある。カップルでない、連動していないという意味であろうが、もはやアメリカ経済に世界経済は連動していないということを表現した造語である。それは中国、インドの経済力が伸び、世界の経済の中心はアメリカ、太平洋圏からアジアに移りつつあるということを暗示する言葉として受け止められている。
 
  従来、自国の通貨とドルを連動させることにより為替を安定化することは最大の原油消費国であるアメリカを相手にする限り湾岸諸国にとっては価値あることであった。ところがドル札を刷りすぎたためなのかここ5年間を見る限り実効為替相場におけるドルの下落率は35.81%に達している。
  アメリカが景気減退にともない短期金利を引き下げるなかドルペッグを取っている湾岸諸国にはインフレという病魔が出現することとなった。
 
  インフレといえば中国の天安門事件を持ち出すまでもなく生活苦に拍車がかかり時の政権を揺さぶる事態にもなりかねない代物である。
 
  安全保障をアメリカに頼っている国々、特にサウジアラビアなどはすぐにドルペッグから離脱したいがそうもいかない国々もある。そんな中アラブ首長国連邦(UAE)は12月中にも通貨ディルハムを3−5%切り上げる模様だ。ディルハムは1997年以来3.6725ドルで固定されていた。
 
  UAEのインフレ率、年率9%ほどではないがサウジアラビアの場合は年率4%である。ドルに自国通貨リヤルを連動させているドルペッグをとるためドル安によりユーロ高となっている。ヨーロッパからの輸入品が割高となり輸入価格が上昇している。そんな中アメリカの9月の短期金利下げの際サウジ中銀は利下げをしなかった。これは将来的にドルペッグからの離脱の方向性と受け止められている。
 
  日本や中国にとって、ここ何十年間は強いアメリカのままでどんどん消費してくれる国であって欲しいはずだ。中国としてはどんどん輸出に精出せる環境が理想のはずだ。元安ドル高のためには市場介入し、その結果として外貨準備を蓄えドルを買い支えていく。アメリカ市場が健在であればこそ米国債を買い続ける意味がある。中国がドルとアメリカ市場に見切りをつけるなら米国債を買う必要もなくなる。このように見てみるとアメリカ側が無闇に元の利上げをしないなら制裁をすると拳を振り上げることはアメリカの金融商品を買ってくれるお得意様に罰金を課すようなものだ。もし中国が買い控えようものなら長期金利は高騰し米経済は不況にまっしぐらに突き進むことになりかねない。極端なドル安合意を旨とした1985年のプラサ゛合意の時とは状況が違ってきている。
 
  我が国の超低金利政策は先のG20声明で金融政策の早期正常化が必要という文言が採択されている。
 
  対ドル為替では対米輸出の振興という意向で円安ドル高が維持されているが輸入価格高騰によるインフレという問題がでていない。このことに関して日本の場合は国際価格よりも高い物価が維持されている結果だとする見方がある。これが輸入品の値上がりを吸収するクッションになっていると見られている。サウジや中国の場合は日本より安い国際価格で売られているため国際的な物資の値上がりは国内物価に直結する性格を持つ。