さりげなくニュース2007.11.11
先月17日のAFPによるとニューヨーク原油先物取引市場で原油価格が1バレル88ドル近くまで上昇し過去最高値を更新した。またロンドン原油市場では1バレル84ドル31セントまで高騰。今年の初めに50ドルだったものが一年も経ずして90ドル近くまでの高騰ぶりである。
今回の原油価格高騰劇には投機マネーがからんでいると見られている。日本の国家予算80兆円に相当する投機マネーが一日でうごめく世界である。ニューヨーク原油先物市場での一日の取引高は160億ドルと言われているがそのうち50億ドル程度がファンド資金とみられている。この資金の行動原理は単純で、価格の上がりそうな材料をみつけてはそこに大量の資金を注ぎ込むというものだ。これに一役買ったのが歴代財務長官に人材を押し込め続けてきたゴールドマン・サックスだと指摘する向きがある。05年から原油価格は100ドルを超えるというレポートをだして煽ってきた。投機ファンドは儲かるとばかり市場に殺到したと考えられている。
従来原油価格の高騰は実需に裏打ちされてきた。
世界の石油実需は日量8600万バレルである。この日量は万が一イラクの200万バレル/d、ナイジェリアの220万バレル/d、ベネズエラの260万バレル/dが政情不安により供給途絶した場合サウジアラビアなどのOPEX諸国の生産余力に負うところが大きいと見られているがとても追いつかない。非OPEX産油国の生産余力は日量100万バレル弱と見られているがそれを加えても追いつかない。ここにきてロシアの生産能力が俄然注目されることとなった。
わが国のエネルギー安全保障にとって湾岸諸国への依存度が世界でも突出して大きいという現実がある。わが国の湾岸依存度は90%近い比率である。ヨーロッパ諸国の湾岸依存度は軒並み低い。原油の輸入先はロシアや北海油田のあるノルウェーやイギリスである。ドイツの湾岸依存度は5%であるにすぎない。アメリカの場合は輸入の20%程で消費量に占める比率は14.8%(2003年)であるにすぎない。諸外国に比べて湾岸依存度がとてつもなく高いわが国は湾岸地域の動向に過敏にならざるをえない必然がある。
石油需要の多い国として中国が注目されてきているが、ここ10年くらいの間ではアメリカの需要の伸びがダントツである。年平均30万バレル/dの増加率であり2004年などは前年比で119万バレル/dと増加している。
この年、世界の原油需要は250万バレル/d近い増加となっている。アメリカが世界の増加分の半分も占めている原油需要国と言える。
原油価格の高騰は世界経済の好調さによる要因なのか、あるいは産油国の政情不安による供給懸念によるものなのか、また今回のような投機資金の流入での価格高騰なのかを見定める必要がある。
おおまかな流れとして言われていることは、原油価格は商品先物相場指数の推移と類似しているということである。この指数はアメリカと世界の景気動向を反映してもいる。