さりげなくニュース2007.10.28
今クルド問題でトルコの動向が注目を集めている。トルコ議会は今月の17日重大な議決をした。イラク北部のクルド人武装組織を掃討するために越境攻撃を承認したというものだ。ブッシュアメリカ大統領はすぐさまトルコのこの決定は北大西洋条約機構(NATO)のメンバーであるトルコにとって利益にならないとの見解を発表した。
トルコ側は武装勢力の破壊行為に備えアゼルバイジャンとトルコをつなぐ原油パイプラインの警備体制を強化したと発表した。その発表に原油相場はただちに反応して1バレル88ドルの記録的水準となった。
クルド国家を作ることが念願のクルド人にはそれなりの論理というものがある。トルコ側にもイラクへ越境してまでも政治組織であるクルド武装組織を掃討しなければならない論理というものがある。
この問題は第一次世界大戦後のオスマン帝国分割にまでさかのばらなければならない。1920年の条約では現在のトルコの東側四分の一とイラクの北側三分の一を合わせたところにクルド人の国が作られるはずであったがトルコの巻き返しにあい、またロシア等に対する地勢学的なトルコの利用価値ということもあって三年後には、この条約は破棄された。クルド人にとって国家の建設は幻に終わり、無念さだけが残った。その後これまでトルコやイラクにずっとテロ、ゲリラをし続けてきた。それが今回のアメリカ傀儡政権となったイラクでは大統領にはクルド人がなり、憲法の一条項まで作ってもらった。 イラクの北部地域キルクークの帰属を住民投票で決めるというお墨付きをアメリカからもらうこととなった。
イラク北部のこのキルクーク油田は埋蔵量が百億バレルといわれこれはイラク全体の埋蔵量の40%に相当するとみられている。
イラク人口の60%を占めるシーア派は選挙ともなれば単独政権を維持できようがクルド人の独立により失う財産の多さのためにクルド人独立には反対である。スンニ派も反対である。トルコにいたっては一千三百万人いるクルド人が他国にいる数百万人のクルド人と連携されて独立運動に走られたらたまったものではない。軍事行動をなしてでもこの非合法政党クルド労働党(PKK)を掃討せざるをえない必然に迫られている。
英米の論理としてはイスラエルとアメリカの当面の敵であるイランを転覆させるためにクルド人武装組織は有用と映っているという見方もある。ともあれアメリカのイラク統治の失敗がクルド独立問題を生み、また最悪のシナリオとしてトルコの侵攻にイランも北イラクに侵攻してアメリカとの全面戦争を危惧する見方もある。
シリアのアサド大統領は17日にトルコの越境軍事作戦に支持を表明して「正当な権利」だと述べている。
以前からトルコのEU入りに難色を示してきたサルコジフランス大統領は20日のテレビ演説で「トルコは欧州ではなくてアジアの一部だ」とする持論を再度提示した。また「イラン核問題は非常に難しい問題だが、フランスはイランとの戦争を望まない」とも述べた。