さりげなくニュース2006,7.09
少子高齢化が叫ばれている。身につまされて実感しているのは大学経営者なのかもしれない。文部省は大学経営者を震えあがらせた小冊子を発表し関係者に配った。その表紙が青かったために「ブルーブック」と呼ばれた。要は経営悪化で再建のみ込みのない大学に対して、国費投入は国民の理解を得られないという主旨のもと清算や自主解散の助言もありえるという脅しであった。身に覚えのある関係者を震えあがらせるに十分であった。現時点で、経営が振るわずレッドカードを付きつけられた大学は22に上っている。07年からいよいよ「大学全入時代」に突入するようだ。それは大学間の格差となって現われることになる。BFという言葉がある。ボーダーフリーといって大学の難易度を決めることができない大学のことを意味している言葉だ。難易度とは合格者と不合格者の偏差値分布で決まる数字であるが定員割れでは決めようがなくなる。BFは学部学科入試で今春12.3%が該当した模様だ。
少子高齢化問題が将来確実に陰を落とす問題は介護従事者不足問題だ。労働人口は05年が6,620万人で30年の予想では5,597万人となり1,000万人の減少である。いざとなれば数百万人のフリーターがいるからなんとかなるといった問題ではないようだ。ある経済学者は人という経済資源にも比較優位論を適用しようとしている。要は希少な資源を得意な分野に投入して他は海外の人材を活用しようという考え方である。確かにこの考え方はグローバル戦略そのものといった感じがしないでもない。自由貿易を押し進め大英帝国という一大富を築いたイギリスに始まり現在では海外との自由な貿易と投資という戦略で一大富を築いたアメリカの流れの中にある思考でもある。
30年には介護、福祉への従事者は56万人増員を要するという数字が大学の研究機関から発表されている。 最近、海外から人材をうけいれたケースとしては、8万人のフィリピーナに「興行ビザ」を発給。だがアメリカより「人身売買」と指弾されて十分の一に狭めて現在にいたっている。日産自動車の社長ゴーンに象徴されるように我国は技能のある優秀な人材好みである。だが30年後、現在と同じGDP(国内総生産)を維持するためには570万人の労働力確保が必要であると弾きだされている。それができないなら為政者のトップにはゴルバチョフやサッチャーを借りてきて我国の首相にしたほうがいいといった冗談とも真面目ともつかない話に付きあわさざるをえなくなってしまう。
強い産業を自国で行い弱い産業の生産物は諸外国から買ってくればすべてがうまくいくというのが比較優位論に基づく自由貿易の立場だ。それに抵抗しているのが我国にあっては農業に象徴されるような保護主義である。ところが農業にも補助金をだして人材育成と技術支援をなすならば農業はなくなるものではないと考えるのが日本のグローバル戦略を推し進めている論者の基本的考え方のように見うけられる。