さりげなくニュース2006.9/10
山形県立日本海病院と酒田市立酒田病院の統合に係わる民間監査法人「新日本監査法人」による報告書が斎藤山形県知事に先月31日に提出された。
さて、医療の世界に市場経済が持ち込まれたのは2004年の医師臨床研修制度の導入が大きかったと指摘する向きがある。
医師研修制度の歴史は悪名高いインターン制度が昭和43年まで続きこの制度は大学紛争の一端となった。今回の医師臨床研修制度は医師国家資格を受かった後の医師の卵は、2年間の研修を終えれば出身大学に縛られることなく首都圏の有名大学を選択しようが、患者の多い大型の病院に勤めようが自由になった。この制度は医師の供給源を大学から奪うことを意味した。これまで大学に医師供給を頼ってきた自治体病院の医師確保にも暗雲が立ち込めることになった。3月に大手新聞のアンケート調査によって実態が明るみになった。都心の大学では新制度導入前に比べてほぼ変わらない医師を確保できたが大分大では62%減、琉球大で53%減、独協医大で57%減と回答を寄せている。その結果、大学病院の医師不足から派遣医師が引き揚げられ病棟の半数を閉鎖したり産婦人科や小児科を休診せざるをえなくなった病院も出てきた。地方にとっての医師の存在は現在の原油並の高騰が続いていると表現されている。
医療がサービス業だと言われはじめたときから供給が需要を喚起するシステムになっている。それは儲かる仕組みは医師が係わって初めて利潤が生ずるシステムを意味し、暴力的な言いまわしながら医師が多いほど病気が増え儲かることを意味していると解釈できそうだ。
公立病院の統合は今後避けられず、今回の日本海病院と酒田市立酒田病院の統合はモデルケースになると見られている。平成15年度末キャッシュフローベースで現金預金が28億円、借入金22億6000万円の酒田病院に対して、平成14年度末で263億円の累積赤字の日本海病院の姿があった。
ところで良い病院とは何かが一番大切なことである。数年前、山形大学第二外科における医局騒動が記憶に生々しい。大阪大学医学部心臓外科から赴任してきた教授以来手術死亡が相次ぐなど心臓手術の成績が極端に低下し医局員が全員止めて一人もいなくなった騒動だ。動物実験と論文書きに明け暮れ手術経験がほとんどなく教授に抜擢されたつけがそれであった。
「良い医療の原点は、医師の臨床能力が高いことにある。日本の医師教育は患者の診療にはあまり役立たない」と指摘するのは今、一番著名な心臓外科医外山雅章氏である。難しい手術が必要な患者を大学病院から民間病院に送る現象が心臓外科ではここ増えていると言う。