さりげなくニュース2006,6.25
北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2号」が16日発射台に設置された。日本政府は中国を通して、発射された場合にはそれ相応の対応をとることを伝えた模様だ。米国西海岸まで到達可能なためアメリカとしては「悪い考え」だと遺憾の意を表明している。98年に「テポドン1号」を発射して、今回ミサイルカードを切ったのは2回目である。関係諸外国は1回目より緊迫した反応をみせていない。なぜだろうか。発射することにより北は唯一の支援国である中国や韓国の支持を完全に失うことになると言われている。北にとっての失うものの大きさがあまりにも大き過ぎるとみられている。
ミサイルカードを切らざるを得ない北のせっぱつまった焦りが見てとれる。マカオの銀行の北のドル口座封じ込めは想像を絶するダメージであることは確かだ。国際的基軸通貨であるドルの発行はアメリカが唯一でどこの国にも許されてはいない。北による偽ドルはアメリカの世界支配の根幹である部分への挑戦でもあった。北がドルのもう一つの発行国であるがごとき振る舞いにでた。アメリカとしては決して看過できないことであった。マカオの銀行は曲りなりにも中国の中央銀行の管理化にある。そこにアメリカが手を出せるということはドルの世界通貨という性格によるものだ。
企業間の決済や送金というものはその国の通貨が流通している国の銀行にコルレス口座を開設して帳簿の付け替えによっておこなわれている。ドルに関して日本の場合はニューヨークのJPモルガン・チェース銀行にコルレス口座を開設しておこなわれる。同じようにポンドの場合はイギリスの銀行との間でコルレス口座を開設しておこなう。北朝鮮の場合とて同じことである。 北のドル決済をできないようにアメリカは北を締め上げているのが北とアメリカの現在の関係である。同様のことは中国やロシアにも言えることであって、先頃の上海協力機構を開きアメリカの忌み嫌うイランのアフマディネジャド大統領をオブザーバーとして招きアメリカの圧力排除ということで気勢をあげてみても、ドルで締め上げられたらどの国も立ち至らなくなってしまう。
このドルの本当の強さは全世界の外貨準備高の約80%がドル建てであることが物語っている。円の、世界での外貨準備高に占めるシェアが4%であることと比べてみるとドルがどういう通貨であるか一目瞭然である。
ドルの強いことは大変結構な事であるが、歴史を紐解くと今から500年前、中国の鄭和(ていわ)が大艦隊を率いてインド洋の全域に朝貢貿易のための基地を設けた頃世界の富の6割は中国に集まっていた。それから富はヨーロッパに移り、やがてアメリカへ、今500年ぶりにアジアにもどってきている。こういう世界の富の流れとなっているときにアジアの貯蓄がアジア域内で活用されるための制度的なものを含めたアジアとのじょうずな付き合い方への視線をもつことが今ほど重要になってきている時はないと、気づきだした。ユーロ圏の取り組みをも参考にしながらアジアを見直してみるのも重要なことに違いない。