さりげなくニュースNo.309
「世界を泳ぎきる覚悟」
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この7月6日にウイーンにて6ヶ国外相会議が開催された。アメリカのイラン核合意離脱宣言後、最初の会議であった。
アメリカのイラン制裁を目前にして、その影響緩和が話し合われた。
出席者はアメリカを除いたイギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシア、イランの六ヵ国である。
前大統領オバマが努力して築きあげてきたイランとの合意事項をいとも安易に捨て去るアメリカの心性はどこにあるのか。
一番の要因はイランの仇敵であるイスラエルの存在である。イスラエル自身は、核弾頭を所有してはいないことになっているが、実質は何百発も所有しているのは既成事実でもある。
イスラエルと隣接するシリアでは、イランの軍事拠点はイスラエルにとっては脅威である。パレスチナの迫害、排除ではハマスは脅威であり、そこにもイランの息がかかっている。
イスラエルにとっては、根っこのイランを徹底的に叩きたい。そこに同調して一緒に行動しようとしているのがアメリカである。
アメリカは国内で黒人、イスパニックを取り込むことに失敗したことと同じ心性メカニズムで、アラブ人を人間とは見ていないのだ。
これはアングロサクソンに特有の、あるものを同化するには、あるものを隔離するという心性である。
このアメリカの帝国としての普遍主義から、ますます乖離し差別主義に近づいた感じである。
比較の意味で、ナチスの帝国志向はゲルマン至上主義が災いして征服民の力を結集するこができなかった、歴史の失敗例がある。
アメリカの普遍主義からの乖離には危うさが感じられる。
戦後アメリカのシステムを支えてきたのは二大工業国ドイツと日本である。その一つであるドイツは、イラク戦争に反対し、それを機にヨーロッパに回帰していった。残された日本は朝貢国として武器その他購入を通じてシステムを支えている。
このアメリカのシステムは、成立当初、絶対的な軍事力と巨大な株式時価総額に裏打ちされて投資資金を呼び込んできた。それが巨大な貿易赤字にもかかわらずアメリカの消費を維持できたマジックであった。
とにかくもソ連の崩壊、グローバリゼーションといった経済における帝国化のおかげで信用を勝ち得た。しかし朝貢率すなわちアメリカへの貢ぎがある一定の負担を超えるとき、帝国からの離脱を考えざるをえなくなる。軍事力に陰りが見え出したときも同様である。
つぎに、ヨーロッパや日本との金利差は絶対条件である。
10年もの国債利回りを見てみる。アメリカ2.8に対して、ヨーロッパは0.294、日本は、0.031である。資金はアメリカに流れていくのは必然である。
ところが、アメリカへの直接投資とカネの流れはアメリカ人の消費ための通貨記号物に変貌していると見据えるなら、アメリカの企業倒産はヨーロッパ、日本の銀行における資金の蒸発となって現れる。
究極のところでは、ドルを支える最後の砦は軍事力を切り離すことはできないアメリカなりの事情がある。それは、ローマ帝国並の軍事力からはほど遠いことの桎梏かもしれない。