さりげなくニュースNo.307
「ここにも若者がいた」
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中東に吹き荒れたアラブの春で、エジプトはムバラク大統領を倒し、イスラムのムルシーを大統領にすえた。まもなく軍事クーデターで現在のシン大統領となった。多くの宗教のなかで楽観を宗とするこのイスラム教の地は、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」により、人権危機と称される地となっている。異端狩りがおこなわれたり、裁判なしの処刑が横行している。
こんななか、この三月に大統領選挙が行われた。投票率は41%と半数以上の人が棄権をした。ここで珍現象が起こっている。大統領選に立候補していないサッカー選手に、170万票以上の無効票が投じられたのだ。彼の名こそモハメッド・サラー、プレミアリーグの強豪リバプールに所属するエジプト人だ。人柄は飾らず、謙虚で私欲がなく、しかもプレミアリーグ最優秀賞を受賞するといった名ストライカーなのだ。エジプトのエリートをあてこするような存在だ。この新たなイスラム教徒の英雄に自らをささげずにはいられないエジプト、今の若者の閉塞感なのだ。
若者ということでわが国で連日話題をさらったことは、日大アメフト部による反則危険プレーである。加害者の青年はたった一人で監督、コーチ、世間の大人達を向こうにまわして、誠実な記者会見を開いた。たちまちに世論を見方にしてしまった。大人たちの悪知恵を働かせた、保身のスピーチなど、足元にも及ばない、真実の腹の底からの言動であった。本物と本気が、これ程に力強いものであることを、大人たちに教えてくれた。森友・加計がらみの政治家は恥ずかしい限りであったろう。
国内の政治に目を向けてみよう。
親分、子分という関係で物事を見るとき、わが国の体制での一番の危機は、田中角栄からの伝統であるアメリカの子分であることに良しとしない中国よりの小沢一郎が、権力を握ることであった。その阻止には現在の権力、秩序側が最大の方策で阻止を試み成功した。憶測ではあるが、鈴木宗男、佐藤優へのソ連の浸透は二人の逮捕、収監で事は大きくはならなかった。
現在の野党のふがいない体たらくを招いた最大の戦犯は、他でもなくサッチャーになりそこねた、現東京都知事の責任は大きい。政治的覚悟のないものにそれなりの権限をもたせるとろくなことがない、ということを白日の下に見せ付けてくれた。
この野党の無いに等しい力のために賞味期限がとっくに過ぎた、安倍首相にもう一期首相を勤めさせることになりそうだ。現在の政権の支えは、片方の羽をもぎ取られた麻生財務大臣であり、その59名の数が頼みである。それに中国に理解のある二階幹事長ではあるが、老いには勝てず、オフィスで居眠りしている状況である。かろうじて菅官房長官が四方に動いている。これでもやっていけるのだ。
頼みの外交といったらとても外交の名に値しない。トランプの教師役を自任していたと思いきや、北朝鮮問題では梯子をはずされ、それではとプーチン氏に歩みよってみたり、習近平氏にウインクまでしそうな、重みのない営業マンの典型に映る。これがかかる者をトップにいただいたわが国の現状である。消化試合を続けるものとしてのトップの政治は、わが国にとっては悲惨なことだ。