さりげなくニュースNo.302
「わが国知識人のサボタージュ」
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アメリカの経常赤字をファイナンスしているのは、わが国の外貨準備1兆ドルである。このほとんどが米財務省証券に投資されている。そうするように取り決めたものではなしに、円高を止めるための、結果としてのものである。
商売を適正にさせてもらっている結果としての、債権者なのである。おまえに金を貸しているんだぞ、といばれるものとは、少しばかり性格が違っている。
だがもしも、リスク分散のポートフォリオ理論に従って、資金をヨーロッパにむけたりと、分散しようものなら、ドルの暴落も起こりえる。同じように中国の外貨準備は日本の三倍あるのだ。いかにアメリカはお得意様であるか。
中国の貿易黒字に占める対米比率は60%にもなる額である。それはアメリカの国内経済の反映そのものである。
アメリカ国内において製造業の、GDP(国内総生産)に占める割合は、10%程度である。輸入に頼らざるをえない。
3月1日にトランプ大統領は重大な発言をなした。関税に関するものだ。鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の輸入関税をかけるというものだ。わが国を除いて中国、ヨーロッパはただちに猛反発した。WTOへ持ち込むことはもちろん、報復も辞さない構えである。報復するとすればアメリカからの農産物に対してである。報復合戦が始まろうものならば、世界経済の縮小化は留まることをしらない状況にいきついてしまう。
現在の世界経済は、伸び率が良い方向に推移している。IMFによると、18年と19年は3.9%と昨年の3.7%より高く見積もっている。
関税問題で沈黙するわが国をどう見たらいいのか。イラク戦争に冷めた姿勢を貫き、反対に回ったヨーロッパとは対称に、はしゃぎ込むほどの支持をした小泉政権に連なるように、諌める声の一つもあげない。これは何を物語っているか。精神の劣化というよりは、わが国の、構造的親米主義者達の、本来の意味での知識人であることを放棄している姿そのものである。中長期的には非常に危険な兆候である。
こういう精神の劣化は、北朝鮮問題においても正しい判断から遠のくことになる。
かつてのブッシュ政権の拠り所となったネオコンは、民主主義を原理主義的に規定して、欧米型の選挙や議会がなければ、それは民主主義ではないという思考のもと、他国に攻め込んだ。これ程の信仰に近い驕りは影を潜めているが、北の問題においては、独善が目に付く。
歴史上最高の善の国が、今後も善であるという保証はどこにもない。裏をかえせば、戦争犯罪から一歩も抜けだせずに、そこに留まって、少しも未来に進み出ようとしない、わが国の姿勢はあれだけのことをしたドイツの未来志向に比べて、見劣りがする。
アメリカのシステムがやがて崩壊する。いや絶対に未来永劫そんなことはありえないと信じるのも、それはそれだ。
今後、重要な問題は二点、中国という国と、わが国の核の問題に絞られる。アジアの安定と均衡のために、わが国の小規模の核保有を世界から懇願される局面が必ずや来るはずだ。