さりげなくニュースNo.292

「わが国の外交のあり方」

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北朝鮮による水爆実験が行われ、世界に(特にはアメリカ)に強震が走った。そのまもなく、安倍首相は経済会議に出席のため、ウラジオストクに出かけた。

 わが国はここぞとばかり、北朝鮮の脅威についての、共同の合意にこぎつけた。実はロシアにとっては何の脅威でもないのだ。ロシアがその気になれば、手際よくねじ伏せるには事欠かないからだ。うがった見方をあえてするならば、北朝鮮の崩壊で難民が2,000万人出たとしても、ロシア極東は、喜んで受け入れ可能だからだ。

 モスクワではある呼びかけが行われた。極東に定住する者には、1平方キロメートルの土地を、無償で提供するというものだ。モスクワっ子に相手にもされていない。

 現在プーチンは上海機構を核に中国と仲良く振舞っているが、それはアメリカという共通の敵がいるからにすぎず、プーチンの不安は極東地域において頂点に達しないとも限らない。

 中国北東部三州の人口は1億人を超えているのだ。一方、ロシア極東(第8連邦管区)の人口は620万人の人口に過ぎない。中国による脅威は歴然としている。アジアへの出口としてのハバロフスク、ウラジオストク。わが国との経済的接点はこの要諦にある。

 歴史の流れはパクスアメリカーナから多極化の世界に移行している。それは他でもなく不安定化がいやが上でも増すことになる。そんななか、かつて23度の戦いを交えたドイツとフランスにあって、ドゴールとアデナウアーが握手をなした。ここから両国の関係は一気に協調を通り越して、企業でいえば合併のところまで突き進むこととなった。ドイツは安全保障面に加えアメリカへの隷属から開放されることになった。同じ悪の枢軸であるわが国は隣人国への罪悪感からいまだに解き放たれてもいない。歴史の長いスパンから、あるときの善の枢軸が、やがて悪の枢軸に変わりうることは高い確率でおこりうる。アメリカが、全体主義と戦った、民主主義の善のままであり続けることはありえない。今のアメリカを見ていると社会的な構造面の不安定さがある。

 所詮わが国は中国の周辺国にすぎない。中国経済が崩壊する可能性があるとしたら、その最大の被害者がわが国である。それは自明なことである。現在の中国が成熟した国家になるまでには、まだだいぶの時間がかかるとしても、前向きな態度でアジアのビジネスリスクを減らしていくうえでも、通貨同盟の創出や、アジア共同体を育む視点を勝ち得る時期に近づいている。ドゴールとアデナウアーが握手できてわが国と中国が握手できないわけがない。

 一般人はともかく、わが国の首相が靖国神社に行くのはカラ威張りとイキガリのなにものでもない。多極化の歴史を生き抜く、正しい視点を備えた指導者の出現に尽きる。悪の枢軸だったことを乗り越えて、どう善の枢軸へと、歴史の船に乗っていくことができるかのプロセスを、どうマネジメントしていくかというのが、外交そのものである。

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