さりげなくニュースNo.290
「アメリカを取り巻くシステムの変貌」
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自由貿易が絶対的真理のように叫ばれだしたのはわが国ではつい最近のことである。これまでアメリカにおいても自由貿易が絶対的イデオロギーとなってきた。その結果どういうことが起きてきたか。ヨーロッパより先んじて産業基盤が破壊されてきたということである。
各国が得意な分野に特化して貿易を行えばパイが膨れるということに基づいている。自由という言葉の裏には競争という意味も含んでいる。もう少し広げてクローバリズムの信奉までいきつくと一部の強い企業が富の独占をなし、その行き着くところは労働賃金をコストとみなすために世界的に労賃は低下していく、その結果国内の需要に陰りがではじめる。いきつくところは世界的需要の減退である。それは世界的不景気に連なることになる。
一部の産業を保護しながらかつ国内の需要を高めたあとに次のステップとしての自由貿易体制への移行といった段階を踏む意味をかみ締めることが大切となってくる。なんでもかんでも自由貿易という教条主義は軽薄である。
わが国のGDPに占める貿易額は29.1%である。この数字の意味するところは、わが国の経済は内需主導の経済になっているということである。比較の意味でドイツは約72%中国は約67%がGDPに占める貿易額である。ドイツ、中国に関してこそ貿易立国という名称がふさわしい。わが国は貿易立国とはかつての日本に与えられた名称であるにすぎない。このところから一部の産業を犠牲にしてまでも貿易の比率を高めるメリットが少ないと戦略を構築すべきである。
アメリカは20年前に自国産業の再建に投資すべきであった。保護主義に徹して地盤を強めた後での自由貿易を唱えるべきであった。なぜなら、現在の五千億ドルの貿易赤字、一日にして15億ドルの資本流入を諸外国からなさないとやっていけなくなっている。そのためには世界の政治の中心にあり続けなければいけなかった。アメリカ経済の良質な部分さえも実は見掛け倒しだと思われたら資本は逃避し、ドルは下落し、同盟国は離反しだしてしまう。アメリカのシステム終焉ということになってしまう。二つの強力な同盟国であるドイツと日本のうちドイツはEUという基盤の上に自らの居場所を見つけ、今ではわが国のみとなりつつある。軍事同盟であるNATOの一員であるトルコの離反は、かつての大帝国の末裔の臭覚といっても過言ではない。
アメリカのこのシステムを守る最後のあがきとみうけられた現象がイラクへの軍事攻撃といってもよい。ユーラシアという中心から取り残される恐怖心がないといったら嘘になる。(ブレジンスキーの中心的な考え方である。)
識字率も完璧になり、独自のイスラム文化を持ち、自らの資源を他国に奪われたくないと思う国民を13万人の軍事力で支配することは所詮無理なことである。
アメリカとイスラエルの凋落の類似性は全人類の平等や国際的な適法性といった普遍カテゴリーでものごとを考えないところにある。