さりげなくニュースNo.287

「アメリカは再生し、偉大さをとりもどせるか」

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世界の企業のなかで、時価総額に限って見るとき、上位にずらりと並ぶ企業はすべて米企業である。アップル、エプソン、グーグル、マイクロソフト‥‥。わが国のトヨタ自動車はようやく30位くらいに顔を出す。アメリカのこれらの会社はいずれもグローバル企業である。会社の利潤のためには労賃をコストとみなしうる経済理論を信奉する者たち、と言い切ってもよさそうである。国内の人材は常に見も知らぬ国々の同程度に優秀な人材と常に競争のもとにある。能力が同程度なら賃金が半分位のほうが企業にとってはありがたいのは当然である。これを簡単な図式化してみると話ははっきりしてくる。

 企業は安い人材を求めて海外に出て行く。国内に残ったものは海外に出て行くことのできないサービス業である。そこで大卒の人材はウエイター、ウエイトレスとして働くことになる。ちょっと極端な言い草ではあるが、まあ、そういうことだ。失業率は6%と言われた。しかしその中には働く意欲を喪失した数を省いているために実態は23%くらいであろうと見られている。共和党のある議員の言い草が弾んでいる。「アメリカは地球上で一番裕福な国民だ。テレビもあるし2,000ドルの中古自動車も買えるではないか」と。ところが、FRB連邦準備制度理事会の報告書によると国民の三分の二が、400ドルの現金も用意できないというのが実態なのだ。なにかがおかしい。この国の経済理論を学んで持ち帰りわが国の大学で教えているのが主流である。学生がかわいそうである。これは余談である。

 貿易赤字が年間で五千億ドル、一日当たり15億ドルの外国からの資金流入を必要としている。国外への依存にしっかりとおんぶしている素顔こそがアメリカである。輸出に強いヨーロッパ、十分な天然資源のあるロシアは自前でも生きてはいける。あるいは、わが国のように江戸文化の完璧鎖国でも自前の技術力を展開しうる教育水準の高さで十分やっていける。

 先ごろのパリ協定でのあのトランプ氏の態度にメルケル、ドイツ首相は何を思っただろうか。アメリカはもうとっくに世界の慈悲にすがっているのに、軍事力をかざして得意になっている。もうついてはいけないと。ヨーロッパはそう感じても不思議ではない。

 わが国の場合は、インドのような身を翻す変わり身の速さは恥ずかしくてやれはしないし、かといって近隣諸国との関係に重大な弱点を持つ以上、安全保障上のアメリカ神話に最後まで運命をともにせざるをえない。

 アメリカは富めるものが、ますます、多数の国民を食いつぶすことに不感症になっているが、わが国は輸入経済学を通してそれらを真似る必要は無い。nobless obligeノブレス・オブリージュ、誇り高き力を持つものは、責任もともまうものだという名言をしかと持つことが、ますます大切となってきている。

 アメリカ再生の道はなにも断たれたわけではない。産業の建て直しと、技術革新に邁進すればいいだけの話だ。ただ、イデオロギーの面でどれだけリニュアルできるかは保障の限りではない。

 

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