さりげなくニュースNo.298
「アメリカの心性メカニズム」
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イスラエルの首都をエルサレムにすることを認め、アメリカ大使館をエルサレムに移転することを認める。トランプ大統領は、これまで誰もが手につけないで、先延ばしにしてきた問題に踏み込んだ。1948年イスラエル建国以来の出来事である。
EUはもちろん国連からも懸念の声があがった。ヨーロッパの主要国であるフランスのマクロン大統領は、一方的な決定は支持しないと、同盟国イギリスのメイ首相は和平プロセスを阻害するものだと批判、ドイツは、エルサレムの取り扱いは二国間共存を基に解決されるべきとのコメントをだしている。
アラブ随一のアメリカ寄りの国であるヨルダンのアブドラ国王は和平プロセス再開しようとする努力を損ない、イスラム教徒を挑発するものだと述べている。イスラエルと敵対しているイランの最高指導者ハメネイ氏はイスラム諸国はこの謀略にまちがいなく決起するだろうと、トルコのエルドアン大統領は、エルサレムはイスラム教徒にとって越えてはならない一線だ。ガザ地区を実効支配しているハマスはパレスチナ人にたいする非道な侵略行為をなした。
世界中がトランプ大統領に対する非難の声をあげている。
なぜここまで大胆になれるのかというのが素朴な疑問である。
そもそもアメリカとイスラエルの関係はかくも深いものなのか。これはアメリカという国の成り立ちまで、遡らないとほんとうの理解にまでたどりつけそうにない。
アメリカはヨーロッパすべての国から移民を受け入れて成立した国である。そこにアングロサクソンの心性が色濃く反映することになった。それはある者を同化するためには、他の者を隔絶するという心性メカニズムである。内には黒人であり、インデアン(後にヒスパニック、メキシコ人)である。外にはアラブ人の排除である。うまく吸収されたのは、わが国やイスラエルではあるが、特にイスラエル人にとってはアラブ人を人一般として知覚することがますます困難になってきている。だからパレスチナ人に対して悪事を働く、それを見ているアメリカもまた普遍主義イデオロギーの退潮期にさしかかっている。他人の悪事を眺めることは己の悪事が緩和されるようで心地良い。この心性が今のアメリカを物語っている。
アメリカの経済的衰退は日程に上ってきている。それへの不安は如何ともしがたいものであろう。かといってローマ帝国並みの軍事力があるかといえば、およびにもつかない。現状での打開策は、日米、欧米間の金利差は絶対に必要な条件である。アメリカが消費しすぎ、金融のフローの流入が途絶えたときドルは崩壊する。(わが国という従属国家、インフレ2%に名をかりた金利政策には対外的な面も含んでいる)。
忘れてはならないことは、アメリカの経済は今や、金融の持分が、工業の持分を凌駕して経済は非生産性へと向かっている。ここにアメリカの不安の基があり、非寛容の余裕のなさに現れている。