さりげなくニュースNo.294

「今、アメリカのノスタルジー」by seimeiwada

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 国際連合の機関であるユネスコとアメリカ、イスラエルが対立している。事の発端はパレスチナ自治区にある「ヘブロン旧市街」を世界遺産に登録したことにある。イスラエルがこれに猛反発して、それにアメリカが同調した形になっている。アメリカはこれまで6年間に渡ってユネスコ分担金の拠出を拒否してきた。それは、2011年にパレスチナの正式加盟を承認したことによるものであった。ここでもイスラエルという同盟国の肩を持っている。

 ヘブロン旧市街地はヨルダン川西岸にあり、パレスチナ人が20万人が住んでいる。イスラエル人は入植者という立場で軍隊に守られながら数百人が住んでいる。ユダヤ教、イスラム教両方の聖地でもある。

 ここで思い出されることは今月6月2日の「パリ協定」からのアメリカの離脱宣言である。地球温暖化対策の国際ルールに向け147ヵ国が合意を見ている協定である。

 エゴむき出しなのはどの国なのかは一目瞭然に映る。

 国際連合とはアメリカの作った機関である。各、個別の国々の覇権を機関に移行させることによって問題の解決をはかろうとして設立された国際機関である。当時のアメリカは世界のGDPの半分を占め、それこそ世界支配の効果が発揮されるのは自動的な状況であった。現在のアメリカの国際連合での状況は数の力に押されて自由の効かないものとなっている。その桎梏にいらだち、分担金の拠出拒否といった突っ張り方である。

 ここでヨーロッパ人の疑問が頭をもたげてくることになる。

 アメリカはイスラエル、パレスチナ問題を解決しうる絶対的権限をもっているのに、なぜ解決しようとしないのかという疑問である。

 次になんといってもホットな問題は北朝鮮問題である。本質は北が核保有国であることではない。核を保有している国はパキスタン、インド、イスラエルと第二次大戦勝利国以外にも広がっている。核があるからアメリカに攻撃されるというのであれば、これらの国々もとっくに攻撃されているはずだ。北の場合はアメリカを核攻撃する意志がありながらも、アメリカによる攻撃は現在のところ見送られている。このことに関しては二つの観点から見ていく必要がある。

 イラクを攻撃できたようには北を攻撃できないということである。それは韓国が北に攻撃され、国がなくなる危険を孕んでいることである。また、中国とロシアが攻撃に同意していないからである。

 今のアメリカの国力を推し量るものとしては彼の国が仮想敵国としている国々のリストを見れば一目瞭然である。すなわちイラク、イラン、北朝鮮、キューバである。これが今のアメリカの実力である。

 二つ目の観点は、現在のアメリカが直面している問題は相対的経済力の低下にともなう外交、軍事的過大拡張の派生である。超大国であるための軍事行動の正当化をしつづけ、しかも問題を最終的に解決しないことが大切になってくる。自分の生産だけでは生きていけなくなってしまったアメリカの素顔がある。

 世界GDPの半分を占めた栄光の時代が懐かしいはずだ。

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