さりげなくニュースNo.267
「中国国内経済の翳りと対外冒険主義」
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中国経済は明日にも崩壊するといった感情論が巷に溢れている。尖閣諸島に軍艦を繰り出す中国憎しといった人にはなおさらそうである。
成長率の数字というものは匙加減で、ある意味ごまかしがきく。しかし、貿易統計というものは相手国があるので、正確だと見られている。では中国の、その貿易統計を追ってみる。
輸出に関しては昨年度比の減少幅は、5月の4.1%減、6月の4.8%減、7月の4.4%減となっている。ついで、輸入については、5月の0.4%減、6月の8.4%減、7月の12.5%減となっている。
まとめて、1月から7月まで輸出は7.4%の減少、輸入は10.5%の減少となっている。
輸出の減少が意味するところは、世界経済が深刻なデフレの状況下にあると言える。5月に関してアメリカ向け輸出は12%の減少、EU向けで2.1%落としている。
輸入の減少の意味するところは、内需が十分に成長していないことを意味している。
昨年比での貿易統計が低下しているとはいうものの、貿易収支は500億ドルの黒字である。
次に、中国の国内製造業を守るために輸出ドライブをかけたいところだ。それは、相手国からみれば、自国の産業の衰退、失業のからむ微妙な問題でもある。その面から近隣窮乏化政策ともいわれる。そこで使われるのが自国通貨を弱めて、輸出に有利な状況をつくりだそうというものだ。
中国の通貨元は2005年に1米ドル8.3元に固定した。現在は若干固定が緩和され、変動相場制へ向けての準備段階といったところだ。
中国人民銀行の為替介入は徹底している。輸出産業保護のために元高阻止のため介入する。ドル建て債券を買うことになる。しかし、それは諸刃の剣でもある。将来の元高にあっては、買い貯めたドル建て資産は目減りすることになる。現在、購買力平価でみた元は五分の一程度安いとの世界銀行の試算である。ということは将来、元高は5倍になる可能性を秘めている。ということは、買い貯めた試算価値は五分の一になる。
話は変わって、中国はTPPというアメリカ中心の、ブロック経済圏の、創出の動きに危機感をいだいた。経済における中国はずしの、仲間はずれそのものだからだ。いま中国は安堵感をいだいている。アメリカの選挙期間が幸いしそうだ。大統領候補の二者ともにTPPの成立に反対なのだ。製造業を多くかかえる州の票をどうしても失いたくない。経済のグローバル化は後回しにせざるを得ない状況になってきたのだ。
一党独裁の中国共産党の正当性は、経済にかかっている。アジアインフラ投資銀行AIIBの団結力に翳りが見え出したし、また中国通貨の国際化にいたっては、とてもはずかしい数字となっている。国際銀行間通信協会SWIFTによる6月の決算で使われた人民元のシェアは1.72%とお寒い限りだ。わが国の円3.46%も下回り、英ポンドはもとよりカナダドルの1.96%をも下回っている