さりげなくニュースNo.263
「EU離脱でイギリスは最後に笑えるか」
イギリスのEUからの離脱問題Brexitで、アメリカの国務長官ジョン・ケリーは、イギリスとEUの融和を呼びかけていた。
ケリーはこわばった表情で、今回の降って沸いたようなイギリスの急襲でEUに激震を走らせた。しかしBrexit後は、誰かの首を取るでもなく、復讐の前提をもたず粛々と通り過ぎる姿を主張した。
イギリスの離脱投票後にはじめて開かれた会議では、メルケル、ドイツ首相の言葉は冷たかった。
フランスを初め多くの国々は、イギリスが速やかに離脱手続きに移行することを求めた。メルケル首相は、離脱問題について、英国のEU離脱を遅らせるブレーキも加速させるアクセルも持ち合わせてはいないと、切って捨てるような発言である。
今回、わが国の国内政治とも似通ったものを見出すことになった。東京都知事である舛添氏の辞職は、法的な問題はクリアしていたのに、政治家として都知事の椅子には適さないと判断された。
今回のEU離脱に関する国民投票は法的にはなんら縛りがない。議会で覆すこともできる。しかし、それは出来るものではない。それをしたら、以後イギリスという国は信頼するに値しない国として誰からも相手にされなくなってしまう。ちなみに、議会の多数は、EUへの残留を希望している。
国民投票に舵をきった要因は、移民問題だけではなかろう。離脱することによって経済発展の計算があったはずだ。金融のハブとしての地位がズタズタに切り裂かれるといった心配を埋め合わせるだけの利点もあったはずだ。
ドイツの一人勝ちへのジェラシーが根強く、くすぶってはいなかっただろうか。憶測の域をでるものではないが、不満はあったはずだ。
ヨーロッパは、現在深刻なデフレ経済である。債券利回りは、わが国と同様にゼロあるいはそれ以下である。ECBヨーロッパ 中央銀行はもはや、次の打つ手がないといった状況である。
イギリスの10年ものの国債利回りは1%を超えている。まだ、まともである。
Brexitでおもわぬ波及があった。イタリアの銀行は約5兆円(40bnユーロ)が急遽必要になったのだ。メンバー国の顔色をうかがいつつも、事はそう簡単には進まなくなってきている。反面、イギリスの株価指数であるETSE100indexは上昇を続けている。6月30日時点で6504ptとEU離脱投票前の水準6338pt上回っている。
各国とも通貨を下落させて輸出に有利な状況を行おうとするも、この政策は近隣窮乏化政策という意味合いがあり、非難の矢面に立たされることになる。
一方、現在のイギリスは、大手をふってこの道を突き進んで経済に刺激をあたえようとすることが可能である。
投票結果が離脱を決定した後に、ポンドは売られ1985年以来の水準となり、ドルに対しては10%以上の下落。ユーロに対しては7%安である。これは、リーマンショックを超える歴史的な動きとして記録しうる値となった。