さりげなくニュースNo.262
「EU離脱に揺れたイギリス」」
イギリスのEUからの離脱問題で、何を感じたのかあのジョージ・ソロスが帰ってきた。
1992年に英政府の為替介入にポンド売りで対抗しイギリスに勝利した伝説の人物だ。
これを書いている19日時点では離脱派が勝つのか、それとも、先頃射殺された国会議員の主張する、残留派が勝利するのかは、四日後の投票で白黒がはっきりする。
6月13日の世論調査では離脱派が53%と優位な数字となっている。殺害事件を契機に残留派の大勝利というどんでん返しはあるのか。まれに見る緊迫した劇場中継さながらである。
保守派国会議員330人中150人が離脱に賛成である。そこには6人の閣僚を含む。これを後押ししているのが、移民問題での直接の当事者である、労働者や低所得者層である。EU内では人の移動が自由であり、労働条件等にあって平等であることが謳われている。移民の大量流入により雇用は奪われ、住宅事情は悪化の一途となる現実の前に、EUの理想にはなはだ嫌気がさしてきている現実がある。
労働者階級に限らず知識階級の間でのEUの運営への不信感が芽生えていても不思議ではない。先の大戦を、力をつけてきた新興国が、イギリスやアメリカの従来のリーダーに、楯突いてのし上がろうとする軋みとしてとらえるならば、イギリスのEU内での立場は微妙なものとなる。
実際の統治システムはわが国の官僚支配体制を真似たかのように選挙の洗礼をうけないテクノクラートが物事を決めていく。ここに、主権を放棄せざるをえないイギリスのプライドというものがある。
今のアメリカを中心とした自由主義体制に挑戦し始めてきているロシア、中国への抑止勢力としての政治的意味をもつEUから世界第5位の経済規模をもつイギリスが離脱する意味は大きい。 ドイツ念願の夢である大帝国の形成は、その意図が表出した時点で立ち消えとなる機微に富んだ本質がある。
イギリスのEUからの離脱問題が世界経済に与える影響については、限定的であるという見方がある。ただ、イギリスの国内の成長率への影響については、OECD経済開発協力機構は、2020年に3.3%の減少に転じていると予想している。一方IMFは欧州と世界経済に深刻なダメージであるという見解である。
現在の世界経済は、通貨下落と資金流出に歯止めがかからない中国。デフレに逆戻りの感があるわが国。欧州を初め各国は金融政策で景気後退を食い止めようとするものの、余剰資金は株式市場にながれ、そのバブル化を誘っている。
原油価格の低迷に国家財政の破綻の瀬戸際にあるベネズエラなどは、バレル12ドルが損益分岐点だから国営ベネズエラ石油は社債のデフォルトは心配ないといったところまで行き着いている。OPECの雄サウジアラビアの財政危機は雇用問題を引き起こしかねない時点まで来ている。自国民が人口比半分といったUAEやカタールの一割とはちがった悩みをかかえている。