さりげなくニュースNo.260

「世界経済のリスク要因」

 世界経済にとって直近の不安材料はイギリスのEUからの離脱問題だ。国民投票はこの6月23日に迫っている。

イギリスの通貨ポンドの独立性は認められ、他に移民問題に関する特例も認めてもらいEUは譲歩を重ねた。イギリス国民は、それでも分担金の額には値しないと考えるのか。

EUとしてもギリシャなどのお荷物をかかえながら、イギリスの分担金がそっくりと抜けられたら既存国へのしわ寄せが半端ではなくなる。

EU内ではドイツ、フランスに次ぐ強大国であるイギリスに離脱されることは痛手である。

しかし、イギリス側の痛手のほうが大きい可能性がある。

イギリスの主要産業は金融業である。多国籍企業はメリットが大きいということでイギリスに進出してきているわけだ。たとえば、EUの単一免許制度の適用外となれば、業務部門の一部をEUに移さないといけないことになる。またEUとの関税面でのメリットが失われるとなれば、イギリスから撤退ということもありえる。金融で成り立っているイギリスから直接投資は一時的にしろ激減し、新規の設備投資も手控えられることも予想される。また、経済面に留まらず、政治面の動きにも波及するかもしれない。

親ユーロ色の濃いスコットランドやウエールズの英国からの離脱問題が再燃しかねない。

英国がEUから離脱したならば、英国の金融部門はずたずたに切り裂かれる可能性がある。それは、とりもなおさず、全世界への震源となり、揺さぶることになる。

離脱の賛否は現在拮抗している。態度を決めかねている人が20%いる。これが結果を左右しそうだ。

世界への第二番目のリスク要因は中国である。

他の国を犠牲にして自国の需要を喚起するデバリューション政策である。通貨元を弱めて輸出を刺激する政策である。それに、中国の経済成長鈍化に伴う企業の倒産ラッシュがあげられる。

先頃、政府の影響下にある新聞にペンネームで政府高官の論文が出て話題になった。経済担当のトップ李克強首相の経済意見とは異なる見解が発表された。V字成長ではなくL字成長への進言であった。李克強氏を否定できる人物はといえば、習近平国家主席しかいない。やり方が毛沢東と似てきた。

共産党一党独裁政権の正当性は経済のみである。中国は、いまやMiddle Income  Trapに陥り国民一人当たりの所得の伸びに限界が見えてきた。歴史的にも知的水準が高く、反体制への狼煙が上がったときの政権維持には脆さを露呈するというのが中国だ。

世界への第三番目のリスク要因は、わが国とEUで進められている量的緩和政策とゼロ金利政策である。

この金融政策で需要が喚起できないことが明らかになりつつある。ヘリコプターマネーで現金を配れば配るほどに不景気感をますます主張しているようで資金は貯金に回る。その資金を受け入れた銀行は、最大の投資先である国債も中央銀行に奪われ、儲け口をなくし、体力の弱いところは倒産である。その処理の仕方は預け客責任のベイルインである。最終的には国民にそのツケが回ってくることになる

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