さりげなくニュースNo.259
「中国経済はメルトダウンに向かうか」
李克強首相は、現在の中国経済を称してMiddle Income
Trap(中所得経済の罠)と位置づけている節がある。
先進国なみの一人当たりのGDPが一万ドルを超えることができないでいるのだ。原因は多々あるであろうが、安い賃金で組み立て製造業をなして、低価格で世界に輸出攻撃をしてきた。しかし、自国の賃金が上昇することによって、新興国からの追い上げに直面することになる。先進国においても、この間徐々に技術革新を進めてきたということもある。
中国はこれまでのような高成長率を維持出来なくなってきた。それにともないハードランディングが言われ始めてきている。だがIMF(国際通貨基金)の見方としては、そうではない。2017のGDPの成長率は6.5%と予想している。
13世紀モンゴル民族が怒涛のごとく中東、ヨーロッパに攻め入り、その背後にはぺんぺん草の一つも生えだしてはこない猛攻のように、つい先ごろまで中国製品は他国の生産工場を食いつぶしてきた。
リーマンショック以前の人民元の為替レートは対ドル7元、8元の水準であった。アメリカは立ち上がり、元高にしないならダンピング税を課すると息巻いた結果、これまでずっと6.8元台で推移してきた。2014年1月には元最安値6.03をつけるまでになった。2015年6月の6.2から徐々に元安は進み、今年の1月には最安値6.59元をつけた。今年5月8日現在6.5元である。
アメリカは現在政策金利を上げる姿勢を崩してはいない。わが国やヨーロッパは、ドル防衛という意味をこめての超緩和政策を取り続けている。しかし、円は対ドルで上がり続けている。業を煮やした財務当局は介入を示唆するが、アメリカの財務長官より、やんわりと介入を否定されている。しかし、安倍首相により、行き過ぎた円高を問題視する発言が飛び出している。
恐れるのはアジアに広がりを見せそうな通貨競争だ。なんといっても中国の動きから目が離せない。
中国の資金流出は一段落ついたかに見える。それは、ドル借財の支払いと、国内投資家のキャリートレードが一服ついたことにもよる。中国の政策金利は昨年の後半時点で、1年もの貸し出し金利で4.35%、1年もの預金金利は1.5%である。
中国の世界経済システムの地雷源となりうるものが、すっかりと払拭されているかといえば、そうではあるまい。
マネーサプライM2は、GDP比200%という数字にある。これは約20兆ドルである。これが中国元の減価デバリューションの方向に進路をとる兆しである可能性も否定できない。
世界は2009年4月のG20で打ち出した大規模の財政拡大のメッセージを忘れてはいない。一年半の間に500兆円の財政拡大を世界は行うべしというメッセージであった。新車購入への支援、住宅購入への支援、雇用政策への支援など、財政支援に目が向いていた。同じように昨今の動きは同じように財政に焦点が合わせられそうだ。