さりげなくニースNo.258
「ドルは延命しつつあるかに見える」
アメリカのイエレン連邦準備制度理事会(Fed.)は利上げをしそうで利上げをしない。アトランタFed.やサンフランシスコFed.は、インフレを懸念しての利上げ派である。ボストンFed.は景気後退が見え出すまでは利上げすべきであるという意見である。
アメリカ、いつからこんなに景気が良くなったのか。日本、ヨーロッパはデフレに苦しみ、後遺症の多い金融緩和政策をしないと、悪夢の景気後退に、国民に、パンを食わせることもできないところまで落とされる、そんな恐怖の瀬戸際にある。一方、リーマンショック以後のどん底の世界経済を内需の需要喚起で世界経済を牽引してきた中国経済に深い翳りが見え出してきた。
これを尻目にアメリカはインフレを懸念するといった贅沢な立場にある。
ドルはいったいどれだけアメリカに還流しているのだ。途上国は債務返済に高いドルと直面し続けている。アメリカの政策金利の上げには、国内事情のみならず、国外の国々の事情というものを考えないとといけなくなっている。
雇用に関して、ここ数ヶ月間で140万件の仕事を創出したと豪語している。それに違わず月に20万人前後雇用数は増え続けている。失業率に関してもつい数年前の10%台はうそであるかのように5%前後の数字である。労働市場の力強い改善は強調されている。
一方国内経済の牽引力である設備投資と消費に関しては、今年の1月時点では慎重な意見であった。インフレ期待については、下方修正といったところだ。
今月の15日に行われたG20で、わが国に向けられた意見発表があった。
ルー米財務長官は、まず、通りいっぺんの経済成長にむけて、構造改革、金融、財政政策の活用の仕方に言及し、極めつけは、増税の時期のタイミングを誤ることなく、景気低迷に陥ることのないようにと指摘した。
先ごろのIMFによる2017年の成長見通しで、主要国のなかで唯一のマイナス成長と予想されたことが念頭にあったのかもしれない。
ドルの製造機械を独占しているアメリカの金利政策は一国にとどまらず、世界、とくに発展途上国の債務問題に多大な影響を与える。世界のGDPの36%以上がドル債務である。債務国にとっては他人事ではすまされない。アメリカ発の高利貸し婆さんをラスコリーニコフが首を絞めたくなる気持ちにも一理ある。
話はぐっと変わって、大胆な政局予想を空想的にしてみたい。
アメリカ大統領候補トランプ旋風とは、NATOは冷戦の遺物にして、負担金はヨーロッパと折半すべき、あるいは、日本に駐留のアメリカ軍の負担に対して応分の支払いをしないなら軍は撤退する。君らが自前で防衛をなせという立場である。戦争経済で生き延びている軍産複合体との本質的な利害は一致しない。その理由で、トランプ氏とは真逆のクリントン氏がまちがいなく大統領になる。そして、北朝鮮問題に関しては、水面下での中国対策が完了した時点で軍事行動にでる可能性がある。それが2年後か、あるいは、オリンピック過ぎか、そう遠くはないはずだ。わが国の軍需産業の株価に要注意だ。わが国のデフレは一夜にして吹っ飛ぶはずだ。