さりげなくニュースNo.257
「金融政策の次を見つめる時期の到来か」
マイナス金利は先ごろわが国で始められたが、その先輩格はユーロ圏とスウェーデン、デンマーク、スイスなどの北欧である。ユーロ圏では、2014年6月に始まっている。わが国に先駆けること1年半前である。
わが国のその政策金利のマイナス幅は、マイナス0.1%、ユーロのマイナス0.3%、北欧のマイナス0.5%台よりは規模が小さい。
わが国の場合、マイナス金利を付与した割合は、銀行の総資産に対して1%に留まっている。ヨーロッパの例から、マイナス金利に移行して1年内外での受け取り利息の減少幅は14%ほどになっている。ダメージが大きいと言えば大きい。しかし、それを埋め合わせるメリットがあれば話は別だ。
期待されるのは、金利差による為替に与える影響である。資金は金利の高いほうに流れるから当然円安に触れるはずだ。しかし、このところ円高基調に推移している。どうしたものか。アメリカ経済の実態は発表数字より、実体は相当に悪いのか。また石油価格低迷による新興国経済に一抹の不安があるのか。また、日銀のバランスシートへの思惑が影響していのかもしれない。
病根の根っこが深いデフレの退治にインフレを期待しているものの思い通りに行ってはいない。このまま期待した効果がでないとなると、弊害が一躍クローズアップされかねない。
ヨーロッパセントラルバンクECBのドラギ総裁は、マイナス金利遂行に当たって、批判の意見を傍に置いて、ここ2年間のマイナス金利での量的緩和政策を実行しなかったら、ユーロ圏は惨憺たるデフレと債務比率増大のスパイラルに陥っていたと発言している。しかし、実体は打つ手の多くが封じられているというのも偽らざる現実でもあるようだ。やがてマイナス金利は0.4%へと進めるものと見られている。
ドイツはマイナス金利の弊害に言及しだした。ECBはデフレに過度に反応し過ぎである。その遂行は機械的すぎる。ドイツは 現在通貨供給量M3は9%台の伸びをみせており、住宅市場も上昇している。もし、このマイナス金利政策が今後5年続くものとするなら、ドイツの1,500あまりの貯蓄銀行の半分と、信用金庫は破壊されるであろうと考えている。
マイナス金利政策2年目のユーロ圏、代表的な株価指数であるユーロSTOXX指数と銀行セクター指数での大幅の下落が続いている。マイナス金利による銀行の収益が悪化し、銀行株が売られている。
政策金利のマイナスはどのように実体経済の利子に反映していくのかが問題である。ヨーロッパの場合を見てみる。
政策金利がマイナスとなる前後では預金金利はプラスを維持しているが、やがて、大口の短期預金がマイナスに転じだす。住宅ローンは従来の3%前後から1.5〜2%になり、短期の貸付金利は従来の2%半ばが、一年内外で1.8%に低下している。わが国も同じような動きになる可能性は否定できない。
次にインフレ期待値を見てみる。ECBでの5年先スタートの5年物(インフレスワップ フォーワード レート)は1.4%となっている。市場でみたインフレ指標である。