さりげなくニュースNo.255
「OPECの戦略は敗北したか」
OPECの石油戦略は、石油価格低水準を維持して、USシェール掘削業者を潰すことであった。
OPECはアメリカのシェール革命に敗北したのか。
アメリカのシェールオイルの生産量は2014年の日量45万バレルを皮切りに昨年は923万バレル、今年の予想でも931万バレルが見込まれている。この量はサウジアラビアの日量とほぼ同じ値である。ちなみにOPEC全体での日量は3,350万バレルである。
アメリカのシェールオイルの生産者は、原油価格がバレル50ドルで経営が立ち行かなくなると見られていた。しかし、現在の採算コストは24ドルから36ドルとみられている。
シェールオイルの掘削大手といえば、Anadarko Petroleum, Devon Energy, EOG Resources, Noble Energyである。彼らは2015年掘削オイルの一定割合をバレル80ドルにヘッジしており、ダメージを最小限にする方策をとっている。
OPECの原油低価格水準維持は本体の財政に相応の負担を課している。本来の原油価格であれば、100兆円の収入になるものを40兆円で甘んじることになる。
アメリカの国内事情に対する読みにおいて甘さはなかったか。
ジェール債はスタンダード エンド プアズでの格付けはBB以下のジャンク債である。これが焦げ付いたときのダメージはいかほどのものか。リーマンショック時でのサブプライムローン程のものなのか。全然規模が違う。総額で1兆3,000億ドルのジャンク債市場の約16%を占める規模でしかない。それに、シェール業者のしぶとさは、背後に控える約70兆円の未公開株所有のグループである。
ゴールドマンサックス、シティグループの今後シェール企業に対する見立ては、次のようなものとなる。
シェール企業の資金調達は厳しくなる。ヘッジはやがてきかなくなり、生産に支障をきたすことになる。そこで、需給のバランスは引き締まり、原油価格は50〜60ドル台へ高まると踏んでいる。その時点でシェールの生産量は活発化する。
オペックの見立てとしても原油価格を50ドルから60ドルを見据えている。それはとりもなおさずUSオイルシェール企業の生存であり、それはまた、シェール企業を倒産に追い込む戦略の敗北を意味する。
ところで、今後原油価格はどこまで高くなるのか。
原油の世界需要は日量9,360万バレルである。287万バレルが余剰となっている。また、世界経済に加入をゆるされたイランの原油が市場に流れ出してくることが確実となってくる。
イランの目論見としては、日量500万バレルを市場に出したいところである。この量はアメリカやサウジアラビアの半分に匹敵する量でもある。ただ、主要油田は70年もの古さであり、また技術は洗練されてはおらず、投資家は二の足を踏んでいる。
予想される生産量は、当面、日量で36万バレル程度と見られている。