さりげなくニュースNo.274

「小粒国家へと変貌するアメリカ」

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ここにアメリカにおける異人種婚すなわち混淆婚率(こんこうこんりつ)の数字がある。

 アメリカ黒人男性の50代の混淆婚率は2.3%、若者で11%。黒人女性では3%と、征服人種の男性は、被支配女性を娶るというのは、一種タブーとされていることを物語る数字である。

 アメリカという国はイングランド人を中核として、そこにアイルランド人、ドイツ人、イタリア人、ユダヤ人を移民として受け入れて、内的平等主義に基づいて同等として扱ってきた。

 ユダヤ人の混淆婚率は若者で50%に達している。日本を筆頭にアジア人に関してはどうか。50代で8.7%、若者で30%である。イスラエル国家との連帯が鳴り物入りで伸張していった数字にようやくアジアも近づいてきている。

 これらの国々がアメリカの内面に受け入れられてきた背景には、排除された人種の存在を忘れてはいけない。ラテンアメリカ、メキシコ、インディオといったヒスパニックである。アメリカはこれらを他者とみなしてきた。

 トランプ次期大統領がメキシコとの間に壁を作れと言っているのは、今はじめて突如として起こった発想ではない。(なんらかの理由でヒスパニックの混淆婚率は統計から排除されている。)

 トランプ氏個人の思いつきではないと思える言動が次々と彼の口をでる。

 アメリカは経済的には帝国である。それは極端に言うならばローマ帝国の絶頂期に匹敵する帝国であると言っても過言ではない。それが、半世紀もしないうちに自信もなにもかも喪失してしまおうとしているのか。トランプ氏の吠え声にいみじくも感じ取れる。

 経済的帝国とは、これまでのアメリカの姿そのものであった。極端に言えば、アメリカ人は生産活動などいっさいしなくても良く消費に明け暮れていればいい。(マルクス経済理論の理想を地で行っている)。ローマ帝国風に言うならば政府からパンとサーカスという娯楽を与えられ、国民は温泉に入って過ごす。これがアメリカ人には可能であった。それを保証するのが強いドルという基軸通貨である。

 他国民は労働にせっせと精出し、アメリカはその生産物を自由貿易という名のもとにドルで吸い上げる。ドルが強くあるためには、当然強い軍事力を有して他国に睨みをきかせないといけない。

 トランプ氏の方策は、強い帝国の方向性から、ことごとく離れていっているようだ。

 国内に産業を取り戻そうなどといった弱小国の発想に規模が縮小し始めている。1兆ドルを公的支出とインフラにぶち込むと豪語する。中央銀行は、ここぞとばかり利上げに虎視眈々としている。利上げにはドルの還流という面と副作用として新興経済圏へのドルの流動性阻害という面を持つ。経済的帝国をはなから放棄するならば、世界にドルを安定的に供給するという役割を捨てやっても誰も文句は言わないであろう。

 ここ数年、トランプ氏という大統領のもと、小粒な国家に変貌していきそうだ。

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