さりげなくニュースNo.272
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「トランプとともに来る風景」
没落におびえるアメリカ白人層のパワーはすさまじかった。
筆者は今回のアメリカ大統領選は、どんな手段を使ってもエスタブリッシュの秩序を守りきろうとするクリントンを勝利に導くはずだと予想をたてた。
2000年のブッシュとゴアの大統領選は僅差の激戦で、選挙不正も取りざたされ、裁判所に判断が持ち越されるという過去を持つ。今回も同じような展開になるだろうと予想していた。
最終的にヒラリーの健康問題などに端を発し、リスクを犯して、どうしても当選させるには二の足を踏んだと思える。
ブッシュ対ゴアの最終的な票は271対266の激戦であった。大票田のフロリダ25人がどちらの陣営に落ちるかで勝負は決まった。ブッシュに女神が微笑んだ。
この時の選挙はある面でいい加減で投票機メーカーの間違いでは済まされないずさんさでもあった。ある選挙区でゴアにマイナス1,600票、ブッシュにプラス4,000票というふうにプログラムされていたのだ。
今回、大票田フロリダの票が開くまでの昼時点でトランプ氏がクリントン氏に50人の差をつけていた。フロリダの29人をトランプ氏が失ってもまだ余裕のある展開であった。このフロリダにおいて、接戦であったことに変わりは無い。97%の開票時点で両者1ポイント差であった。
ついでアメリカの縮図といわれているオハイオ州18人区での出口調査では開票が終盤にかかる頃、10ポイントの差でトランプ氏が優勢であった。白人票ではトランプ氏が30ポイントもリードしていた。ちなみに黒人票はクリントン氏の88%に対してトランプ氏の8%であった。ここに、今回の投票行動の縮図を見ることができた。
トランプ氏の予想される経済政策で胸をなでおろすのは、連邦準備制度理事会FRBかもしれない。この12月の利上げに弾みがつきそうだ。金融政策に頭打ちになりつつある中、大幅な財政政策を打ち出しそうなトランプ氏の援護射撃が期待できるからだ。マーケットは70%の確率で利上げを予想している。
ここでたいへん困る事態が発生する国々がでることになる。
世界経済はドルペックやドルへのリンクを通じて60%はドルナイズされている。世界の負債は10トリリオンドル(約1,000兆円)の負債がある。ドルの利上げは他人事ではない新興国の思いだ。新興国としては経済の緊縮化を強いられるはめにならざるをえない。
最近新興国の通貨は軒並み大幅な下落傾向にある。主だったところではブラジルレア、ロシアルーブルの40%下落。マレーシアリンギ、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソの20%
〜30%の下落。そんななか、新興国の債務は過去10年間で4倍にふくれあがっている点も見逃せない。
もう一つのトランプ氏が打ち立てるであろうインフラの増強は、バンクオブアメリカによると、年に2.5%の赤字を招きインフレに連なると見ている。それに減税策として法人税率を35%から15%に引き下げる案などは見逃せない。