さりげなくニュースNo.271

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「世界の中の中央銀行イエレン議長」

 

 

わが日本銀行は円を作りすぎて、バランスシートは真っ黒けの大赤字。さあ大変だ。というように発想する人は、個人の家計を預かる主婦ならば至極当然であり、立派な経済感覚の持ち主として賞賛されることはまちがいない。このことは、物を大切にするという美徳が過度にもてはやされるとき、消費は落ち込みその結果として生産は減少して、企業の在庫は積み増し倒産への道、まっしぐらである。個人は消費を控える。過度の無駄遣いでサラ金の高利に手を出し破産。それを防ぐための質素倹約の美徳は、個人にとっては最低限必要なことである。

 中央銀行の場合は、経済が増大するときには、中央銀行は赤字を垂れ流す。中央銀行が黒字化しているときはデフレになっているときである。このことは、最小国モナコであろうが基軸通過の国アメリカでも同じことである。

 世界経済が拡大している時にドルをしっかりと世界に向けて供給することがアメリカの義務である。自国の雇用状況があれこれだからといって出し渋ることは許されない。中央銀行のバランスシートは赤字である。しかし垂れ流しにも限度というものはある。ベトナム戦争クラスの出費を同時に何個もかかえて天文額的な赤字を垂れ流したとすれば、話は変わってくる。

 それでもアメリカは痛くも痒くもない。家計の主婦のようにサラ金のお世話になるということもない。世界がインフレになるだけの話である。

 ただ、アメリカの生命線である、世界への通貨発行権というドルの基軸性への信認が揺らぐということは最も恐れなければならないことである。信任がうすれたなら、アメリカは確実に破産する。通貨システムが崩壊してしまう。

 現在、世界経済の60%が基軸通貨ドルというアメリカ通貨システムに依存している。ドルの支配権の負債は$9.8trillion(9,800兆円)に及ぶ。中国が自国通貨普及をめざすAIIB銀行を創設したとしてもドルの足元にも遠くおよびもつかない。

 アメリカがとんでもないめちゃくちゃをやらない限りはドルの基軸性は安泰である。

 アメリカのリセッション景気後退が叫ばれている。年初から4.2%から2.5%と名目GDP国内総生産が減少し続けている。失業率も5月の4.7%から5%と悪化している。

 連邦制度準備FRBのイエレン議長は12月の利上げに意欲満々である。ところが、ないがいから懸念の声が今回も聞こえてきている。

 イエレン議長の見立てとしては、不動産部門を初めとしてインフレ懸念が出ているということだ。その芽を早めにつまないといけないという思いである。わが国の中央銀行のメンタルにも言いえることであったが、安定期と見るや必ずといっていいほどに締め付けに動く。これまでのリセッションはすべてこの締め付けがセットとなって本格化した。

 アメリカの中央銀行は、とりもなおさず世界の中央銀行でもある。イエレン議長は世界のデフレの現状をどう見ているのだろうか。

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