さりげなくニュースNo.270
http://yumin.tyo.ne.jp
「決断を迫られるサウジアラビア」
石油輸出機構OPECの盟主としてのサウジアラビアは、アメリカのシェール企業に戦いを挑んできた。
まあ一言で、この新参者にして成り上がり者シェール企業のアメリカに相当に嫌気があったであろう。
だが戦いの勝敗は見えた。アメリカのシェール掘削企業は、石油価格バレル40ドル台に耐えて生き延びた。アメリカは、シェールオイルのおかげで、世界最大の産油国になった。余談になるが、アメリカが中東から急激に関心を失っていく理由がわかろうというものだ。
OPECとロシアはこのうんざりする現実になすすべもない。
これまで、数多くのサウジアラビアの事情というものが取りざたされてきた。
今年の1月にイランの経済制裁がとかれたことが大きい。シリア、イエメンではサウジはイランと代理戦争をなす地域覇権をかけてのライバル関係である。サウジにあっては敵対するイラン対策としてはなんでもありといったところだ。
そんななかにあってのサウジは石油価格高騰に向けて重い腰を上げざるをえない状況に追い込まれて来ている。
サウジの財政赤字はIMFによると、GDP比15.9%(昨年)である。今年は13%と見られている。
現在サウジの通貨リヤルはドルにペッグしている。1ドル3.75リヤルである。リヤル建てでの売上げをのばすにはペッグをはずしリヤル安にもっていくことも考えられる。しかし、輸入に大きく依存してもいるので、輸入価格の高騰に不利という面も勘定にいれておかないといけない。
経済の70%を原油に依存する国は原油価格の低迷で財政赤字はうなぎ上りとなっている。外貨準備高はピーク時の746bnドル(約74.6兆円)が現在550bnドルまで減らしている。これが400bnドルまでに減じることになるとマーケットの心理的リスクを招きかねない。
原油生産量の減量にかたくなに反対してきたサウジが方向を転換して非OPECのロシアを誘って減量に動き出した。今月の末にはOPEC一部の加盟国と非加盟国のロシアなどがウイーンで会合を持つことに決まった。
サウジの姿勢としては、一部の産油国特にイランの増産には反対せず、とにかく原産の枠組みに行き着きたい考えに固まってきたようだ。
ただ、各国の具体的減産数字という具体論にさしかかったときに、すんなりと事は治まるのか、あるいは、減産が細部にわたって決まったはいいが、罰則規定もないところで、約束の遵守ができるのかという懸念もある。
イランとしては、この減産がきまることにより、価格は上がることが期待され、しかも制裁前の水準まで増産をなす。大変な利点である。
中東におけるライバルに譲歩してまでのサウジは、大変に経済的ピンチの状態にあることだけは確かのようだ。公務員が7割を占め、サウジ国民に関しては税金はタダ。医療費もタダ。これがサウジ家の存在意義であった。まもなく、その意識から抜け出さざるを得ない現実が訪れてこようとしている。