さりげなくニュースNo.269

「富んだ20年前、悩める現在」

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この第二四半期のわが国のGDPの伸びが発表されている。予想よりも少しばかり良くて年換算で0.7%の伸びであった。

 この数字に貢献したのは住宅、公共投資であった。輸出や設備投資といった企業関連は低調であった。それに輪をかけるように期待の消費は0.2%とふるわなかった。一方、アメリカにあっては、1.4%と予想よりも良かった。

 このところ貧しい層と富める層の二極化が進んできていると意識されだしてきた。人材派遣という労働の新分野を法整備してきた。人材派遣社員の平均年収が200万円台と低賃金化の色彩を帯びてきているところから、労働分配率は低下傾向にあることが予想される。

 話は変わって、わが国の名目GDPはアメリカ、中国に次ぐ世界第三位と胸を張っているが人口一人当たりの収入は惨憺たるものだ。OECDという発展国のクラブ34カ国中20位のところに位置している。トップ国は言わずと知れた、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンといった北欧の国々だ。

 グロスの売上げが大きいのに一人当たりの実入りが少ないのは、生産性の問題なのか、あるいは構造上の問題なのか、どこかに問題があるからである。

 ただし、平成22年から24年にかけての名目一人当たりのGDPが急激に高まった時期があった。なんのことはない実体経済によるというよりも、為替の対ドル80円という帳簿上によるものであった。しかし、20年前は、実力で一人当たりのGDPは世界第3位という時代も経験してきた。

 現在の風景はあまりにも苦難に満ちたものだ。10年もの国債はマイナス0.085%で値がつく。マイナスはわが国だけではなくドイツなどもマイナス0.122%である。アメリカはプラスの1.598%(9/30現在)。

 各国とも経済の病であるデフレとの闘いに金融政策という処方箋で対処している。金をジャブジャフと、とりあえずは撒き散らすことを頼みの綱としてきている。ヨーロッパセントラルバンクECBのドラギ総裁はドイツからの信頼を喪失しつつある。一方の量的緩和QEのわが国にあっては、その出口戦略のなさを国際通貨基金IMFより危惧されだした。

 アメリカの大統領選挙は、わが国の経済に与える影響を過少評価はできない。仮定の話として、ある候補が、同盟国から駐留軍隊を引き上げるということにでもなれば、わが国の国防費は嫌が上でも増加せざるを得なくなる。国内経済に与える影響は多大なものと成る。

 先頃、安倍首相は、国連総会の後、大統領候補のクリントン氏とのみ会い、もう一人の候補トランプ氏との会見を持たなかった。

 トランプ氏にも保険をかける姿勢は外交の基本のはずだ。クリントン氏の健康問題が憶測を呼んでいるなかにあってはなおさらである。

 戦時状態の恒常化を利得とする軍産複合体を代弁するクリントン氏にわが国は期待をかけたと読み進めることを印象づけたひとつの事件でもあった。

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