さりげなくニュースNo.252

「さ迷えるサウジ、石油戦略は功を奏すか。」

 

この1月中旬木曜日に信じられない指標がでた。原油価格の三大指標の一つであるブレント先物のスポット価格がバレル27.78ドルをつけたのだ。

 バレル100ドルではじめて財政が均衡する産油国が多い中での石油価格であった。ロシアも、ベネズエラも、もちろんサウジアラビアであっても相当に苦しい。

 国家破綻がとっくに視野に入る石油価格の下落である。

 サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコのトップであるアルファリフ(AL−Falif)氏の鼻息は荒い。

 わが会社のバランスシート上での負債はゼロである。ゆえに、次なるビックな果実を手に入れるまでには、どんな低価格にも耐えうると豪語している。

 この果実とは、もちろん次に来る石油価格の高騰であることは論をまたない。それには、世界石油業界に新規参入してきたUSシェールの存在が念頭にあることは、これもまた論をまたない。

 一日当たりの石油の生産量が多いビックスリーは、サウジアラビア、ロシア、アメリカである。そのおのおのともに日量で1千万バレル台である。

 ここでサウジアラビアが目の敵にしているアメリカの場合、近年のシェール革命が大きい。アメリカの石油生産量の半分近くを生産するようになってきている。

 サウジの目の付け所は、このシェールの生産コストが高いところにあった。バレル60ドルではアメリカのシェール企業の大方は倒産するという読みがある。石油の名手としてのサウジは威信にかけて、この新参者の市場からの退出を願っている。

 アメリカとしてもシェール債がジャンク化することによるリーマンショック以上の激震は避けたいところだ。高い原油の買い手を政府あげてセールスすることになる。

 世界の原油需要は2015年IEA国際エネルギー機関によると日量9,360万バレルである。2015年8月OPEC発表によれば、世界の原油供給過剰分は、日量287万バレルである。アメリカのシェールを撃退すれば十分にお釣りの来る数字である。たとえ、核疑惑を許され市場に打ってでるイランの増加分は今年中に50万バレル見込まれるとしても。

 それにしてもサウジは、この3月のデーターでは、前月比39万バレル増産と2013年以降の高水準を驀進している。

 IEAの恐れることは、現在の価格崩壊ではなく、サウジアラビアがライバルを蹴散らした後の原油価格の高騰にあるようだ。

 サウジアラビアは地球上でわが国をも凌ぐ対米従属国であった。しかし2015年という年は、屈辱の年と化した。アメリカの石油生産量はサウジを超えたのだ。それに、中東における一方の盟主であるイランに歩み寄るアメリカの姿を目の当たりにして、さまよえるサウジという王家の戸惑いとポスト原油への取り組みが近々のものとして浮上しだした。

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