さりげなくニュースNo.241

ロシア経済にみる危機的状況

ロシアという国は政治力と軍事力で生きているような国である。先頃、上海機構の総会を自国で開催し、アメリカ、ヨーロッパに並び存立する大きな極の存在感を見せ付けた。

 BRICsをもしっかりとまとめ上げ、基軸通貨であるドルの崩壊にそなえた動きも随所に見られる。

 この731日に、外交文書の暴露で著名なウィキリークスによる、わが国への重要な発表があった。

 わが国の中枢部は、ここ10年内外に亘ってアメリカから盗聴され続けてきたという電撃発表である。それに対して菅官房長官は、遺憾の意を表明して、アメリカ側に厳重に抗議するという対応であった。

 今まさにTPP交渉真っ只中の時期での暴露であった。

 ドイツのメルケル首相の個人的モバイルが盗聴されたときのドイツの対応と比べてみても、なんとも穏やかである。。ドイツの場合は外交問題に発展する直前の怒りを沸騰させた。

 このことだけで、TPP交渉をひっくり返しても足りないくらいのことである。わが国は、まるで怒りを忘れたカナリヤである。

 これらの一事からも、わが国の精神は、特にこの国をリードしているエリートの精神は相当に劣化している。アメリカとの関係では、国内における中央集権化のもとでの地方の思考停止と似通ったものを対アメリカとの関係に感じられる。

 アメリカはわが国に対してこのような精神的制度化を完成させたといいえる。

 優秀と称される官僚というエリート群は、精神のある制度化の面にあっては優秀ではあるが、視点をほんの少しばかりずらしただけで魯鈍であると言いえる。

 話題を元に戻す。

 ロシアは今、大変な危機のもとにある。原油価格が低迷することは、もろに政府の予算から、なにからなにまでに響いてくる。ガスの国営企業である巨大企業ガスプロムは、石油だけでGDPの10%、国家予算の20%をたたき出す企業である。ここにロシア経済の危うさが叫ばれているところだ。

 ウクライナ危機による経済に及ぼす影響が、ここにきてボディーブローにきいてきた。油田開発のためのテクノロジー導入から遠ざかることによる生産ロスが二桁近くまで出てきていることだ。ロシアとしては、財政不足を生産増でピーク時の一日100万バレル台に持っていきたいところだ。

 原油価格の低迷がサウジアラビアの政策に負うところが大だとするならば、やがては回復が期待できる。それまでの繋ぎとしての対策が秒読みの段階に差し掛かってきた。

 ここ一年内外で、とくにウクライナ危機以来、外貨準備高を約20兆円減らしている。今年の後半期で約86bnドル、日本円にして約10兆円の外貨を必要と見積もられている。これはプーチンの選挙公約で福祉に厚く、サラリーマンの給与向上という政策が響いている面もある。

 今、ロシア48の地域の四分の一はデフォルトの危機にあると言われている。

 ロシアの産業構造に端を発した潜在的経済危機の問題をかかえながら、素顔は政治国家、軍事国家として生きていく。その反面教師として、わが国の方向性も自ずから見えてくる。戦争ごっこに遊び、大国にして同盟国のパシリのような軍事使っい走りの国家に自尊心をもてるかという視点に行き着く。どんなに親友であろうとも、相手の恥じべき行為に対してへらへらしているようでは、エリートの体をなしてはいない。

2015.7.26  by K.Wada

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