さりげなくニュースNo.238
「中国は世界経済に必要な国なのか」
習近平中国国家主席は、このところ元気がいいのか、それともピンチなのか。わが国に少しばかり擦り寄り始めてきている。安倍外交の勝利なのか、それともそれ程のものではないのか。
アメリカの政策決定に多大な影響力をもつ外交問題評議会CFRから、この4月一つのレポートが発表された。
中国主導でのアジアインフラ投資銀行AIIBの創設はアメリカに決定的な敵愾心をいだかせた。アメリカという国はある面では資本家の意思が強く反映する国柄である。CFRの重鎮であるキッシンジャー氏は、ニクソン政権時の国務長官で、中国との良好な関係を築いた人物である。そのCFRから出たレポートは、70ページに及び、徹底した中国押さえ込みを主眼としたものだ。軍隊を政権基盤とする習氏にしても震え上がったに違いない。
まもなく東シナ海での埋め立て事業を中国は終了させることになる。
わが国との問題となっている尖閣問題は、わが国と中国との二国間の問題というよりは、対アメリカとの問題であることのほうが強い。太平洋という公海上での勢力圏の線引きという要素が強い問題である。
中国の最近における強気の姿勢は、ほかでもない生産力の驚異的伸びに在ることに異論は無いはずだ。国内総生産GDPが年率7%で成長してゆくなら、それは10年とかからないでGDPは倍になる。わが国のGDPをあっという間に追い越したのはうなずける。
さて、アメリカのGDPを追い越せとばかりに中国の鼻息はとてつもなく荒い。
中国のGDPに関するある見方が出ている。公式発表よりは低く、この第一四半期の伸びは年率にして4%であるというものだ。
これはうなずける数字であろう。工場出しインフレ率は4.6%のマイナスであり、37ヶ月継続しての低迷である。現状は、債務バブルに陥り、システム的に過剰生産力に陥っている。これは、他でもなくデフレの病魔に取り付かれている。わが国の1990年代のバブルそのものの再来である。
中国当局はシャドウバンキングにメスを入れはしたもののGDPがこのまま低迷することは到底容認できない。
このところ刺激策に転じ始めた中国。
地方は銀行借り入れから債券の発行に切り替えだしている。当局としては、市場の基準借り入れを5%から2%に引き下げる刺激策で後押ししている。
不動産価格が、この5月には2.8%ジャンプした。これだけの上昇は5年ぶりである。
アメリカの生産力を超えて名実ともにGDPがナンバーワンになるためには、4%の成長率では20年はかかってしまう。そんな悠長なことは言っていられない中国の事情というものもあるだろう。
世界の意思決定機関がG7からG20に変わった時点で、アメリカの衰退傾向は誰の目にも明らかになった。
ドルがなんとか持ちこたえているのは、ヨーロッパやわが国の、量的緩和政策QEに負っている面は否定しようもない。また、アメリカの巨大企業が生き延びる手段としての要素を持つTPPが合意に達したとしてもアメリカの衰退傾向は止まらない可能性がある。その時の中国の役割はいかにという問題が出てくる。