「同盟国、日本かわいや」

K.Wada 2015.5.31

さりげなくニュースNo.236

 

安倍首相が訪米をして米上下両院合同会議で名誉ある演説をなした。あれほどのスタンディングオベーションという歓迎を受けた理由が長らく疑問に思えた。

 アメリカに忠誠を心から誓っただけでは、ああも歓迎はされるはずがない。

 アメリカのかかえる国内問題、外交問題に注目しないとアメリカのほんとうの素顔は見えてこない。

 債券市場を守るために実体経済を犠牲にしようとも、国債の発行を無尽蔵に為し続けているアメリカの中央銀行は、国債の利率高騰に、いつ見舞われるか戦々恐々としているところだ。この六月にはこの量的緩和政策QEから抜け出そうというスケジュールは昨年から立てられてきた。

 生半可では出きることではない、日本も同様なのだが、一時しのぎの麻薬が全身を蝕み始めている段階に来ている。

 夕張破綻などはかわいいものだ。昨年デトロイトは財政破綻し、今シカゴが破綻に瀕している。

 国債発行を減らすということは、インフラは減少せざるをえなくなる、教育へしわ寄せがいき、年金支給額や貧困対策費はまっさきに削られることになる。

 一度飲み始めた毒は、すぐには止められないことを意味する。

 わが国の場合も同様で、10年後と待たずにアメリカと同様な状況に置かれる可能性がある。基礎的財政収支をバランスするには、経済成長を2%維持しても2023年までかかる。わが国においても、無尽蔵の国債買い入れに不安材料が出始めたせいか、国債の発行を減らして外国の株式を含む株に公的年金ポートフォリオとして50%みている。日本株を買い支えているのは、日銀、ゆうちょ、公的年金が主立っている。

 現在の銀行業務は、元手がゼロ円で数パーセントの利ざやを稼ぐ。国民は、下手すると銀行に預けることは元金が減ることも想定しないといけない時代になってきている。現に大口取引先の預金に対しては管理費名目で徴収を検討している向きもある。

 国民が現金に勝るものはないと思い始めたら経済はおかしくなってしまう。まあ、そうなる前にカード決済等の法制化に進んで阻止するであろう。

 さて、本題に移る。

 中国が音頭をとって進めようとしている、アジアインフラ投資銀行AIIBに、アメリカは相当な動揺を隠せなかった。アメリカという国は資本家が政策の意思決定に大きな力を発揮する国なのだが。このたびは、この政策決定に重要な判断材料を与える外交問題評議会(CFR)の関係者による70ページに及ぶレポートが、この4月に発表された。対中国戦略の見直しを迫るレポートである。

 このレポートの共著者の一人、ロバート・ブラックウィル氏は現在、キッシンジャー氏のいるCFRでの上級研究員である。これまでは、ブッシュ大統領のもと、国家安全保障会議にも所属してアフガン、イラク問題への提言をしてきた。

 中国はこのレポートに震えあがったに相違ない。

 中国は、アメリカの虎の尾を踏んでしまった。レポート曰く、アメリカのプライオリティを自国経済の力強い興隆以前に、中国押さえこみに置いている。具体的手段としては、中国の経済、軍事に制限を加える。同盟国との協力関係を明記している。

 アメリカは防衛予算を増やし、南、東の中国海域において空海戦力の増強と太平洋地域への地対空ミサイル配備を急ぐ。

 AIIB事件で同盟国に裏切られたアメリカのショックたるや想像をこえたものだ。この時ほど日本がかわいいと思ったことはなかったろう。

中国のジャブ攻撃、戦争責任の前にひざまずき、もっともっと懺悔し、中国の軍門にくだれという中国は、今後、口をつむぐはずだ。

表紙に戻る