「ドイツ、アンゲラ・メルケルの政策は歴史に耐えうるか」

K.Wada 2015.5.17

さりげなくニュースNo.235

 

先頃モスクワでは軍事パレードが行われていた。プーチン、ロシア大統領の側には習近平、中国国家主席の姿があった。欧米主要国の出席はなかった。

 対ドイツ戦勝利70周年記念パレードであった。

 今、英米覇権体制の中、アメリカの一極支配は瓦解しだしているのか。まだ持ちこたえようとしているのか。中ソを中心とした上海機構を基盤に経済的にはBRICSの到来なのか。

 そんな中、もう一方の極として、ドイツを中心とした大統一ヨーロッパ帝国の復活。それを深層心理に持ち続けているであろうか、EUの存在を無視するわけにはいかない。

 余談になるが、わが国の立場は、主要なプレイヤーになることからは、ますます遠のいていっている観がある。

 本来の地政学的なところから考えるならば、当然アジアの連帯ということで中国との関係が深化して当然なところである。しかし、中国の未熟な朝貢外交を強いる伝統意識の前に、わが国はその中に取り込まれることを極端なまでに拒否する姿勢を取っている。

 中国に歩み寄る姿勢は 鳩山ー小沢革命の失敗で、完璧なまでゆり戻されて、本来の、米国よりとなる。

 イスラエルがイランとの対立にアメリカを無理やり引きずりこもうとするに似た傾向をわが国にも垣間見ることができる。

 一連の軍事同盟強化のわが国の動きは、仮想敵国中国への備えと理解可能である。

 このように見てみると、わが国の方向としては、ヨーロッパのような将来に向けた自立の構築といった建設的方向は見えてこない。精神が、相当に劣化している兆しと結論づけることが可能である。そういう意味では非常に危険性を帯びていると現状を推察できる。

 

 さて、本題に移ることにする。

 ロイター通信は、ドイツ首相アンゲラ・メルケルの後姿3枚写真を提供していた。彼女は国旗の三色を彼女のバックにあつらえていた。黒いバック、赤いバック、金色のバックである。

 歴史家はメルケルの政策を振り返ってよたよた歩きの失政であったと書き留めるはずだという意見がある。

 ドイツの経常収支黒字がすさまじい。昨年など、対GDP8.25%である。6年間を通しても6%といった高い数字である。現在の失業率は4.7%以下である。南欧の国々が10%以上の失業率に四苦八苦している時にあまりにも他人行儀に映る。

 経常収支が黒字であるということは、他国への失業の輸出であり、域内での貿易のインバランスが疑われてしかるべきである。

 債務バブル崩壊に苦しむ南欧の国々に対して、ドイツの取る姿勢というのは、債務の回収に中心を置き、根本の制度改革を含む救済の面を後回しにしていると言われている。ドイツ国民の反応は、ドイツは十分に救済の手を差し伸べている。もうこれ以上のことは、する必要がないという姿勢が大勢を占めている。ヨーロッパマネタリーバンクEMUの制度的な面への思考は後ろ向きだ。

 EU域内にあって貿易からみたドイツの為替水準がユーロ水準より安いことが考えられる。たとえば、山形県が仙台市と競争する場合、仙台市に対して貿易量で勝利するには、最低賃金を極端に低くして競争力をつけて勝利する。譬えは適切ではないが、貿易上のインバランスは、適正になる必要がある。ドイツは低所得者の税を軽減して国内消費の拡大に努めないといけない。ドイツ内の幸福のため資金を使い、域内の幸福のために資金を使わないといけない。若者の50%が失業している歴史的由緒ある国々が存在していること自体、経済的にEUの実験は失敗だったといわれても反論のしようがない。

 ドイツと南欧との乖離は、貿易水準で見ると、ドイツは18%は安いと言われている。

 ドイツはヨーロッパ大統一に向けて、EUの幸福のために物神崇拝を止められるであろうかということが、最大の関心事になりそうだ。

 こう見てくるだけで、ヨーロッパには、花があり、将来に対して建設的である。一方のわが国は、勝つか負けるかの狭隘な世界観で深みと、面白みが欠如していることを認めざるをえない。


 
 AIIBが成功するかどうかは、中国の経済と、共産党一党独裁体制の安定度にかかっているというのが大方の見方だ。
 
 一年に300万人の労働力の減少、賃金上昇に生産力がついて行けるかの問題。それに体制に正当性がないという根本の問題を抱えている中国の前途は必ずしもばら色ではない。
 
 しかし、習近平最高指導者のもと力をつけてきた中国であることに変わりはない。

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