イエメンの混沌は、原油価格に
どう影響するのか。

K.Wada 2015.4.12

さりげなくニュースNo.233

 イエメン情勢が緊迫度を増してきた。ロシアは、同国人を避難させるために、空爆の一時停止を国連に図り、飛行機を飛ばしている。
 

 現在、首都であるサナアを制圧しているのは、シーア派系武装組織フーシである。
 

 フーシの軍隊は良く訓練されていて、プロペラ付きミサイルや地対空ミサイルをも装備している。これらの武器は戦闘の中で手に入れたり、イランから来ていると見られている。訓練はレバノンにあるヒズボラから受けている。
 

 こう見るといかにもイランの関与が直接的になされているようだが、そうでもなさそうだ。
 

 イランの最高指導者であるアヤトラ・ハメネイ氏に近い、かつての大統領立候補者アリレザ・ザカーニの発言に、現在のイランの中東への関わり方を知ることができる。
 

 シーア派に起源をもつ動乱の代理的意味でのイランのコントロール化にあるのは、バグダッド、ダマスカスであり、ベイルート、そして、今騒がれているサナアであると自慢げに発言している。この本音は、イラク、シリア、レバノン、イエメンに渡ってイランの影響下にあるということを表現したものに他ならない。
 
  サウジアラビアは、空爆をしてまでも、このイラン系武装組織フーシを攻め立て、国境付近には地上部隊を待機させざるを得ない近近の事情がある。
 

  紅海とアラビア海を繋ぐイエメンのバブ・エル・マンデブ海峡が敵の手に落ちることは、サウジアラビアの石油輸送に壊滅的打撃を与えることになる。欧州、米国への石油輸送の通り道は、バブ・エル・マンデブ海峡を通り、スエズ運河を経由してなされる。それが出来なくなると、南アフリカの喜望峰回りとなる。これは、現実的ではない。しかも、そんなことにでもなれば、エジプトの利害関係ともからむことになる。バブ・エル・マンデブ海峡の安全は確保されなければならない。
 

  日量380万バレルの通り道であるマンデブ海峡は、一躍脚光を浴びることになる。
 

  ところがサウジアラビアにはジレンマがある。ホーシの武装勢力をこっぱ微塵に壊滅させたとしても、この地に根付いているアラビア半島のアルカイダの勢力拡大に、間接的に助力することになってしまう。この武装組織は、先頃フランスの週刊誌会社を襲撃した組織である。本流アルカイダの流れを汲んでいるということは、オサマ・ビン・ラーデンの思想を継承しているはずだ。そのことは古い体質の王家支配に対して、遠からずアンチテーゼとして働くことになる。市民革命への契機ともなりかねない。かといって、イランの後押しのもとシーア派の影響力があちこちで多大になるなら、サウジアラビアの最大の油田ガワールのあるサウジアラビア東部地域で、人口が優位に立つシーア派住民による、反乱へと連なる要因となる。
 

  サウジアラビアは、富にまかせ核を保有しようとすることが懸念されているが、核がどうのこうのという以前の桎梏の中にあるサウジということだ。

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