まもなく世界は「もう高い

ドルは借りられない」





 

K.Wada 2015.3.29

さりげなくニュースNo.231

 世界経済を牽引しているのは、やはりアメリカであった。このように再認識させるような数字が出てきている。

 IMFの2015年、2016年度経済成長予測によると日本の0%台、これまでのユーロ圏の0%台を尻目にアメリカは、3.6%、3.3%と順調に推移していきそうである。

 ユーロ圏は2014年までは成長率が最悪で−0.5%(2013年)、0.8(2014年)であったが今年からは1.2%,1.4%と好調な滑り出しを見せそうだ。一方のわが国は、消費税率を上げた昨年は0.1%と一昨年の1.6%から大幅に鈍化させ、続く来年も翌翌年も0%台から抜け出せないでいる。

 アジア新興国の成長率は昨年6.5%で中国に引けを取らない高い成長率を継続してきた。これらの国々に大きな影響を与えるのは、アメリカの中央銀行であるFRBの金融政策である。

 世界のドルでの負債総額は、約900兆円である。アジア新興経済圏に限って言えば450兆円と過半に達する額である。この数字はリーマンショック以来2倍に膨れ上がった数字でもある。

 ドル資金は利潤を求めていかに多くアジア新興経済圏に流れたか。

 アメリカの政策金利は現在0%を維持している。0%より低い金利を設定することはできない。だからその代りになしたことは、現在わが国がやっていることと同じ、中央銀行による国債の買い入れである。その資金を市場に放出して、金融市場を景気づける手法である。

 以上の0%金利を見直すことをアメリカはすでに決定している。この6月のミーティングで本決まりとなり、7月には第一弾の金利アップが実施される模様だ。その後、波状的に年3回ほど上げられる見通しだ。

 この政策金利が上昇することで、アジア新興経済国は困ることになる。ドルでの借金が今まで以上に高くつくことだ。それに今まで投資されて来た資金はアメリカに引き上げられることになる結果、成長は鈍化することになる。

この影響は、ブラジル リアル、トルコ リラ、南アフリカ ランド、マレーシア リンギッドに及ぶことになる。

 わが国に対する影響としては、アベノミクスでの量的緩和政策QEが継続していることにより、ドルに対して円は、これまで以上に弱くなる。その結果、日常生活に密接に関連してくる日用品、食料品、エネルギーの輸入物価が上がることになる。給与は下方硬直性という性質をおびるために、一般家庭の生活はこれまで以上に苦しいものとなる。ただ、QEにより有り余る金の行き所は株式へ向かう。投資資金のある富裕層は、儲けやすくなり、投資機会のない中産階級は没落していくという構図となる。

 新興国は、もはやドルでは借りられない。しかし、この今の世界はドルがスタンダードで中国元でも、ユーロでも、円でもない。そういう観点からアメリカの金融政策の変更は、世界に重大な影響を及ぼすことになる。

表紙に戻る