さりげなくニュースNo.246
「 いま、中国の舵取りは待ったなし」
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国家的産業であるドイツ自動車産業は、フォルクスワーゲンの排気ガス問題で大きく威信を傷つけられた。
メルケル、ドイツ首相は、先月10月29日に北京を訪問して、李克強首相との会談に臨み、協定にサインした。いつものように中国お得意のプレゼントで、エアバスを何百台購入するといった話となる。ドイツも多分にリップサービス良く、今年中には設立の運びとなるアジアインフラ投資銀行AIIBの創立メンバーとして、ドイツは積極的に関与するといった発言となる。
太平洋への進出でアメリカに対して一歩も引かない中国は強大な力を世界に印象づけている。ケ小平の遺言でもある、力をつけるまでにはじっと耐えて、相手の策動には決して踊らされるなという教訓を捨て去ったかのような自信と力をつけてきた中国の姿がある。
この中国にアキレス腱がないというわけではない。一つは経済の成長を支えるであろう重要なキーワードである人口問題である。労働人口がピークを過ぎて減少に転じ出したという問題である。IMFの試案では、2030年台の中国では、1億4千万人の労働人口不足に見舞われるというものだ。
先月の26日から29までに開かれた5中全会では、ある決定が行われた。30年間取り続けられてきた一人っ子政策を廃止する決定である。
このいまわしき社会実験である一人っ子政策は、中国共産党があからさまに個人の内面、生活の面に足を踏み入れた政治による強権であった。この30年間の後遺症と中国は今後付き合って行かなければならなくなる。
高齢化社会が駆け足でにじり寄ってくるのはなにも中国に限られた現象ではない。わが国の方が、もっと深刻なことかもしれない。ただ中国との違いは、一人ひとりが裕福になった後の高齢化社会を迎えた日本やヨーロッパの国々に対して、中国はそこまでは行き着いていない社会での、高齢化社会の到来である。
勤労者一人が高齢者と年少者の何人を養えれば安定かといえば、最低でも自分を含めて2人である。危険水域は1.3と言われている。中国のデッドラインは2060年である。わが国も似たようなものである。
中国の出生率は当局の発表では、1.8となっているが、専門家の見方では1.4あるいは、もっと低いと見られている。
直近の中国のアキレス腱は、生産過剰によるデフレの問題である。これとの関連で今年中には開設の運びとなるアジア インフラ投資銀行の中国主導での動きであろう。中国は資本金の30%以上を出資して、議決権の26%を確保する模様だ。それに、初仕事は、北京からバクダッドまでを繋ぐ鉄道建設が予定されている。中国のデフレは吹き飛ぶ勘定になる。
次いで財政、金融のバブルをどううまく軟着陸させて処理するかの問題がある。これに関してはわが国の先例ががあり、いかに不況を回避しながらうまく切り抜けるかが大切になってくる。
わが国は20年を失い、その後遺症から今だ立ち直れていない。その対岸の教訓を活かして、いかに創造的破壊というメスを刻み込めるか。そこにかかっているのかもしれない