さりげなくニュースNo.245

アメリカ中央銀行総裁イエレンほどの重圧はない。

  発展途上国を含む新興国の負債は3兆ドルと10年前の3倍に膨れ上がっている。ドルとしっかりとリンクしている姿がある。1998年に通貨危機を引き起こした、タイをはじめとする東アジアはもちろんのこと、南米、東ヨーロッパ、アフリカの国々は、ドルに対して非常に敏感にならざるをえない。

 アメリカ中央銀行Fed総裁イエレンの苦悩もこんなところにある。利上げをしたいが、するとも、しないとも言ってはいない。

 イスラム神学ならともかく、金の価値は利子という物差しで測られる。カルビン派の教義を守り、しっかりと資本主義をまっとうしなければいけない。金を蓄える精神にも反するようなゼロ金利は不健康に見えなくも無い。それに足らずにマイナス金利をも考え出そうといった動きすらある。そうなったら、だれも銀行になど金を預けなどしない。通貨をなくしてしまえといった意見さえ出ている。理論的にはカードでの代用は可能ではある。しかし、現金がないと困る業種がないわけでもない。たとえば、記録に残らないようにするには現金に限る。情報当局の資金の動きは記録に残っては仕事にならないことも多々あるであろう。

 イエレンにとって不健康だから本来の通貨の姿に戻さないといけないと考える、そう簡単にはいかない。国内の金融の引き締めを意味することだから景気の腰を折ってはなんにもならない。そこで国内の実体経済に隈なく目を向ける必要に迫られる。

 アメリカ国内の雇用状況はいかようであるのか。5.1パーセントと、ひところの9パーセントからは非常に改善された数字となっている。

 先頃ロサンゼルスの街中に6万人のホームレスがあふれ、市役所が非常事態宣言を発令したと報じられていたが、それは、あくまで貧富の差というアメリカ国内の社会政策、所得分配の問題である。

 利上げして健全な経済体制にもどしたいというイエレン議長にとって主要国、特に中国の経済動向からは目が離せない。中国は崩壊に向かっているのか、それとも一時的、景気後退リセッションにすぎないのか。

 イエレンの見方としては、中国経済に対しては楽観的であろう。中国から資金が逃避し、それがいつまで続くのかは確証できないであろう。しかし、中国の改革点を中国当局はツボを押さえているという信頼感はもっているはずだ。地方政府の財政危機や緊縮は自国の問題であり、他国の特にアジアで先陣を切ったわが国の通貨変動政策(QE)での環境変化によるものがある。

 一方のヨーロッパにあっては、緊縮は一段落着いたとの見方をしているはずだ。M3は5.3パーセントに伸びている。この7月には量的緩和政策QEのもと銀行に潤沢な資金を流し込みM1は12.1パーセントとなっている。

 一方、中国のマネーサプライM1は8.4パーセントのペースで伸びている。2013年以来、もっとも力強いものとなっている。

 イエレン議長にとって側面の環境は利上げに後押ししているように見えるが、一旦踏み出した後の新興国市場へ、どんなクライシスが訪れるのか誰にも断言は出来ない。

2015.10.11 by K.Wada

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