Mr.ドラギ氏、借金を買い捲るか



 

K.Wada 2015.1.18

イスラム国による邦人人質事件が起こった。

 つい先頃までは、アメリカを最大の敵として活動を繰り広げてきたアルカイダが主役であった。現在はイスラム国である。この集団は国際規範を敵に回す広がりをもっているところがアルカイダに比べてより政治的である。戦後体制で決定された中東の境界線の新たな線引きをも視野に入れているところは、戦後秩序の破壊の最たるものである。

 この鬼っ子がいかようにして発生して来たのかは、本質のところに遡って考察されてしかるべきであろう。

 中東の混沌は、歴史的に石油支配に関わる欧米の支配の歴史でもあった。イラクへのアメリカの侵略は、その最たるものであった。今、イスラム国の幹部には、イラク、フセイン時代の指導者が大挙加わっている事実がある。

 スンニ派を標榜する過激派であるからには、スンニ派国家が、なんらかの利害関係の下にあったとみなければならない。ここで、線は繋がってくる。

 シーア派といってもいいシリアのアサドを倒すのに利害関係をもつ国は、サウジアラビア、トルコを初め、中東の産油国が名を連ねる。イスラム国はその中でも、活動的で援助されるに値する団体であった。

 しかし、ここにイランやロシアが関わってくる。イスラエルにしては、今後の国家の生き延びをかけてのイランとの敵対関係がある。これまでの、イラン側にある、ヒズボラとの戦い、ハマスとの戦いはすべて、イランとの代理戦争であるに過ぎなかった。ここにアメリカはどうかかわってくるのか。

 現在アメリカの議会や国防省はイスラエル右派の強い影響化にあることだ。この視点から中東を見る必要がある。

 前置きがながくなった。

 ヨーロッパセントラルバンクECBは量的緩和政策QEに踏み出した。総裁のドラギ氏が根強いドイツの反対を押し切った格好だ。

 手始めにイタリアの債務スパイラルを解決して、その後に南ヨーロッパの回復に道筋をつける段取りとなる。

 18ヶ月で1.1ミリオン ユーロ、日本円にして約130兆円の債務買取である。

 イタリアの現状は、生産高はリーマンショック以前のピーク時の24%ダウンで1980年代のレベルと言われている。

 ドイツという国は、第一次大戦での戦争賠償を課され辛酸の極限を経験した国である。財政規律に対する心は、並大抵ではない。

 マルケル、ドイツ首相は先のダボス会議で発言している。ECBの独立性は尊重されるべきです。しかし、合理的範囲と、EUの法律に則ることが必要であると発言している。

 オランダのリベラルパーティVVDに、債権国の本音をみるようだ。

 われわれの納税者はイタリアの借金のために支払うことを快く思わない。

 ユーロ圏からの離脱を党是にしているドイツのAfDの党首ベルンド・ルーケ氏は、QEの決定は自暴自棄なる決定であり、ECBによるユーロボンドの不正な導入である


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