「引き際をわきまえたスペイン国王カルロス1世」
2014.6.15

 

       By kiyoaki Wada

  スペインの王様である、ファン・カルロス1世は、6月1日、テレビ会見で退位を表明した。フランコ独裁政体後を引き継いでここまでやってきた。特に、この6年間はどん底の経済を経験した。ここにきてようやく光が見えてきたところで退位を表明した。
 
 後を継ぐのは息子のフェリペ6世である。
 カルロスは、国がどん底の苦しい時に、鷹狩にでかけるという贅沢を国民に誹られ、反省するところとなった。
 
 経済に光が見え出した兆しは、10年ものの国債利回りが2.98%と過去最低を記録している。ヨーロッパ中央銀行ECBの追加緩和政策が発動されそうな後追いも影響してはいるものの、光が射し込みだした。
 
 フェリペ6世の就任を祝うかのように、とんでもない数字が飛び込んできた。この4月に198,000人分の仕事を創出したというものだ。
 
 この数字との比較で、EUの大国であるフランスの場合はどうであろうか。
 
 この4月だけで14,800の仕事がフランスから失われた。(前月比登録求職者数)。そのペースでいくと一年間で鶴岡市の人口に匹敵する仕事が失われることになる。(完全失業者数は約336万人)。
 
 体力も能力もある"働きたし"予備軍は130万人いる。10年前の111万人から上昇カーブを画いている。
 
 世紀の大実験であるヨーロッパの通貨統合は、ユーロ、エリートが思い画くようにはすんなりとは事が運んでいない。10年もの国債の利回りが1.45%のドイツという優等生の国がある反面、南ヨーロッパの国々は苦難の中にある。
 
 従来の為替レートというものを統一ヨーロッパの各国に適用してみると、ドイツに対して20%から30%オーバーバリューだ。これでは競争力にはならない。
 
 では打つ手がないのか。ヨーロッパ、マネタリーユニオンEMUは世界経済頼みである。ところが5年成長サイクルは終盤に差し掛かっている。。株式市場は穴だらけの豆腐で、しかも伸びきっている。ヨーロッパの債務デフレ、投資の呼び込みは望めそうも無い。
 
 雇用に関して気になる数字の比較がある。スペインの若年者の失業率は53.5%である。一方イタリアのそれは43.3%である。どちらもそんなに違いは無い数字である。しかしイタリアの深刻なところは、全体の失業率が13.6%なのに対して、若者の失業率が飛びぬけて高い。これは、長期的経済を展望する時、ジョブヒステリックがどう影響してくるのか、深刻な問題を秘めている。
 
 雇用に関しては南ヨーロッパのみなかず、オランダやフィンランドも悪化してきている。
 
 さて、話題をわが国に戻してみる。
 
 4月は消費税増税の影響があったのか。国内の見方は楽観的、海外のメディアは若干シビアな見方をしていた。
 
 4月の小売販売額は前年比4.4%減。3月は前年比6.4%の増であった。
 
 1997年の3%から5%へ消費税を上げたときは、前年比の落ち込みは3.8%であった。
 
 では、どうしてこうも楽観しているのか。国内メディアも海外メディアも7月から9月にかけて実質個人消費は前年を上回ると見ている。
 
 政府政策である公共事業と賃上げが牽引力となりそうだ。ちなみに今夏、大手の賞与は前年比プラスの8.8%を見込んでいる。