「どこへ行くウクライナ、どこを見る北朝鮮」
2014.5.18

 

       By kiyoaki Wada

 父金正日から北朝鮮の権力を移譲された子の正恩は、着々と独裁権力の仕上げに取り掛かっている。正日の側近中の側近であり、親族でもあった張成沢の処刑が如実に物語っている。
 
 中国に全面的に経済を依存している割には、小姑化する中国を排除しようとする。金日成から続く主体思想は、綿々と孫にも受け継がれている。こう見ると北朝鮮の国是とも言いえる「主体思想」とは、中国といかにうまく付き合うかということに収斂される。
 
 第四回目の核実験が日程に上ってきた。アメリカから北朝鮮のことは任された中国としては、大国の面子以上の意味合いをこの核実験に感じ取っているはずだ。
 
 中国が名実ともに東アジアの盟主となりえるためには、北のコントロールは必要条件である。
 韓国は、ほぼ中国経済の懐奥に組み込まれつつある。問題は、アメリカの庇護が望めなくなった、近近のわが国をどう傘下に組み込むかということにある。
 
 中国嫌いが極度に達しているなか、近未来に朝貢外交に舵を切ることはわが国のプライドが許さないはずだ。そこから帰結されることは、自国の安全保障上の生き残りをかけ核武装を含む、あらゆる方向が視野に入らざるを得なくなる。
 
 その意味で、北朝鮮のこれ以上の核実験は、決して許してはならない。近隣諸国の核への刺激があまりにも大きすぎる。中国の偽わざる本音であろう。
 
 米韓から攻められても今度ばかりは援軍を送らないと日本の通信社にリークする中国の真意をだれも額面通りは受け取りはしない。金正恩の絶対権力が完成した暁には、また中国に擦り寄ってこざるをえないことは百も了解済みだ。
 
 さて本題のウクライナ情勢から目が離せない。
 
 東ウクライナにおいて、ロシアは背後で糸を引いているのかどうかということである。
 
 スペインの見方が非常に示唆に富む。スペインはロシア国営企業ガスプロムには依存していないから、真冬に凍え死ぬということもない。しかし、どちらかといえば、強硬派ではなく、ハト派的立場である。ロシアへの制裁には積極的ではない。その思惑をヨーロッパのシンクタンクであるオープン ヨーロップが見立てる。
 
 スペインは債務デフレの国であり、ヨーロッパ中央銀行EMUに依存しているという現状である。ロシア制裁で返り血を浴び、ヨーロッパの金融危機を恐れている。
 
 バルト三国、なかでもリトアニアなどは、ロシアにGDPの32%も依存しているのにロシア制裁に関してはスーパータカ派でもある。
 
 ツァーリに支配され、20世紀になってからはボリシェビキというイデオロギーの仮面を被った皇帝に翻弄された負の遺産を持つ。心情的にはアンチロシアにならざるを得ない東ヨーロッパ、EU加盟国である。
 
 なんといってもアメリカのEUへの圧力がある。金融兵器で、ロシアの侵略の意図を、木っ端微塵に打ち砕こうというものだ。
 
 ロシアの銀行、企業を金融市場から排除することをアメリカはEUに強いることになる。
 
 ロシア ユーロボンド$120bn、約12兆円を来年にロシアは書き換えなければならない。
 
 ドル債務を数週間でなんとかしようとしても出来るものではない。
 
 金融兵器を使われたらどんな国もひとたまりも無い。マンハッタン計画に匹敵する新たな戦争形態の出現だ。