By kiyoaki Wada
4月3日、ユーロは、2月以来の対ドル安値をつけた。1.3698ドルである。
ここにきて、欧州中央銀行ECBのドラギ総裁は、デフレの脅威から脱却するためにさらなる施策を講ずると示唆した。これはヨーロッパにおけるさらなるQE量的緩和政策の宣言とも受け止めうる。
今年の後半にはドイツのリセッションが取りざたされるなか、さらなる刺激策が講じられようとしている。一方、QEの先輩格でもあるアメリカは、FRBアメリカ連邦準備制度理事会のジャネット ・イェレン新総裁のもとQEからの漸次撤退が方向付けられている。今年はアメリカとヨーロッパでは別方向に進路がとられることになる。
ここにきてアメリカのQEは検証され始めている。なんのためにこの政策はなされ、どんな効果を得ることが出来たのか。
この検証はアメリカに追随してなされているわが国のQEの行く末を知る絶好の判断材料にもなる。
アメリカの住宅価格の下落に始まる不良債権の拡大は、銀行業務に多大のリスクを課すことになった。銀行の貸し渋りを防ぎ、資金の流れを正常にするには、銀行への資金注入、それにも増してFRBによる国債やその他の資産を買い取ることが必要となった。FRBのバランスシート、信用失墜には目をつぶり、ただひたすら量的緩和QEに勤しむ姿があった。
それは、実体経済にどう良く効果を及ぼしたのかを問われなければならない。雇用状況は改善したのか。残念ながらQEを始めてから悪化こそすれ改善からは程遠いものであった。住宅価格も改善することはなかった。ただ国債の利回りは低下して、信用を増すことにはなった。
わが国はデフレからの脱却というフレーズのもと2%までのインフレターゲットを据えてアメリカ版量的緩和QEを始めている。アメリカのように国債以外のその他の資産を買い取ることはあまりないので、日銀のばら撒く資金量は、アメリカ程とはならない。有り余る資金の向かう先が株式市場であれば株式市場は株高の好況感に沸くのも事実である。その効果で購買需要が高まることも経済にとっていい面でありえる。一般に金融政策が実体経済に十分な効果を出すにはタイムラグとして一年から一年半はかかるとみられている。
4月から消費税が増税になった。その影響は家計への負担として現れる。これは逆進性があるために、家計負担率は低所得世帯ほど高まることになる。
政府は前回の橋本政権での腰倒れを教訓に、早々と5.5兆円規模の経済対策を打ち出した。
200万円以下の所得の家計には配慮を施したものの、消費動向の鍵を握る200万円から700万円所得層までには行き届いていない。
国内需要が落ち込むなら、法人税減税や投資減税をいくらやっても、生産の向上には結びつかないことになってしまう。民間の予想では、今年の成長率は0.8%と見られている。この数字には国内需要のみならず輸出の好条件も加味したものが入っている。
消費税増税後の実質所得減少による消費の減少をカバーすることに政府は安閑とはしていられない。円高、株安に進んだら消費税増税の悪夢は現実のものとなってしまう。また、実体経済の重要な指標でもある雇用には最大の注視が必要となる。