「ロシアにとって命がけの経済戦争とは」
2014.3.30
By kiyoaki Wada
クリミヤ自治共和国のロシア帰属問題でアメリカを初め欧米はそろってロシア制裁に動き出している。
欧米は、何に一番怒っているのか。ロシアとの関係が非常に深いドイツのメルケル首相さえも、EUでの制裁の音頭取りをなしている。
ロシアにも色々と事情は在ろうが、ポスト冷戦体制に変更を迫ることが許せない。それも領土が絡む問題を、そう簡単に右から左へと動かすなどとは言語道断ということに尽きる。
ウクライナはソ連から独立した時に核兵器も放棄して、核拡散防止政策の見本のような国でもある。独立してまだ25年も経ていないからといって、軽くあしらわれては国際的規律がなりたたない。これが欧米の偽らざる気持ちであろう。一方、プーチンの思いは欧米以上のものがありえる。ソ連が崩壊して短期国債はデフォルトし、破産国家を経験している。それから2年後に誕生したプーチン政権は、中央集権的な体制を敷き、国富を食い物にしていた寡占企業のトップを排除しながら、まがりなりにも経常収支が黒字の国家に仕上げた。
ロシアをつぶすのに剣はいらない。油の国際相場を下落させさえすればいいだけの話だ。その欧米の策略を嫌と言うほどに見てきたプーチンに国際法がどうのこうのという説教は通用しないのもまた事実だ。
クリミヤは、ロシアの海洋軍事基地として重要な拠点でもある。ウクライナの政権がその租借に制限を加えることは、あってはならない。ましてウクライナがNATOに加盟して、クリミヤに米軍がこっそりと入り込もうものならば悪夢以上のものとなる。
欧米は今回の問題でどこまでの制裁をするのかは、まだはっきりしない。ただ、一番恐れていることは金融市場に動揺が走ることだ。
誰が売っているのか解らないがアメリカ国債が売られている。それはロシアなのか中国なのか、それともトルコや南アフリカなのか。ロシアの米国債の保有高は、昨年末時点で1,386億ドル、米国債残高の2.4%に相当する。米国債を売っ払うと発言した当時の橋本首相は震え上がって撤回した。米国債とは、そんな代物である。アメリカに楯突く一つの武器である。
欧米がイランに課した様にロシア企業や銀行との取引を停止する強硬な手法に出た場合には、経済全面戦争に突入することになる。それは、ロシアにとっても命がけの戦いになるはずだ。ロシアの輸出高の7割を占める油、ガスの輸出制限で対抗することになる。原油の45%近くをロシアに依存する欧州のダメージも計り知れないものとなる。
ウクライナ情勢が今後もジクジクと梅雨の面持ちでギクシャクすることが考えられる。それはウクライナの欧米寄り政権とロシア住民との軋轢次第ではロシアが関与せざるを得なくなるからだ。
現状ではもう破綻しているウクライナに畳み掛けるように油、ガスの優遇価格での取引を4月から見直す決定をロシアはなしている。あたかも、ウクライナ住民の鬱積が頂点に達するのを待つようなロシアの徹底振りだ。ウクライナの苦難は続きそうだ。